厚生労働省労働政策審議会 勤労者生活分科会

財形貯蓄制度の見直しは、労働政策審議会でどう議論されているか 55歳未満の加入年齢と非課税限度額550万円

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労働政策審議会 勤労者生活分科会
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第36回(2026年7月15日開催)
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財形貯蓄のうち財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄は、利子が非課税になる一方で、加入を始められるのは55歳未満の勤労者に限られています。非課税の上限は、両方合わせて元本550万円(生命保険・損害保険の場合、財形年金貯蓄は385万円)です。この年齢や限度額を含む財形制度の見直しが、厚生労働省の労働政策審議会 勤労者生活分科会で議論されています。

事務局の説明では、「55歳未満」は勤労者財産形成促進法(財形法)第6条に、非課税限度額550万円は租税特別措置法に規定されています(第36回議事録・資料2)。

第36回資料2によると、2026年3月末の契約数と貯蓄残高は、一般財形貯蓄が371万件・9兆2,201億円、財形年金貯蓄が117万件・2兆3,312億円、財形住宅貯蓄が38万件・9,562億円です。

決まるまでの流れ(時系列)

  1. 2024年3月27日 第33回 勤労者生活分科会委員から加入年齢制限(55歳未満)の引上げを求める発言。事務局が年齢要件などの見直しを検討すると回答。
  2. 2024年8月末 令和7年度税制改正要望厚生労働省が加入開始可能年齢の見直し(55歳未満→65歳未満)を要望(第34回資料3・議事録による)。
  3. 2025年3月26日 第34回事務局が、令和7年度要望での見直しは見送ったと報告。
  4. 2026年3月26日 第35回事務局が金融機関等へのヒアリング結果を報告。委員から加入開始年齢と非課税限度額の引上げを求める発言が相次ぐ。
  5. 2026年6月30日 中小企業退職金共済部会 第93回中退共制度の見直しの議論を開始。12月頃の取りまとめ案。
  6. 2026年7月15日 第36回事務局が論点案と議論の進め方(12月頃とりまとめ)を提示。住宅市場の有識者と労働金庫連合会からヒアリング。
  7. 2026年8月31日 令和9年度税制改正要望厚生労働省が、労働政策審議会の検討結果を踏まえた税制上の措置を要望。

議事録と資料の原文

2024年3月 第33回:事務局が「年齢要件」の見直し検討に言及

第33回では、委員から加入年齢制限の引上げを求める発言が続きました。南部委員は70歳までの引上げを要望しています。事務局は、同じ月に閣議決定された「国民の安定的な資産形成の支援に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針」に触れたうえで、次のように答えました。

こうした動きもありますので、政府全体の動き、それからiDeCoなどの他制度の見直しの状況なども踏まえつつ、まず年齢要件、それから先ほど御要望いただいた事務負担の軽減がどうやったらできるかといった点も含めて、財形制度の必要な改善あるいは見直しについて検討してまいりたいと考えております。

(出典:第33回 勤労者生活分科会 議事録。大隈勤労者生活課長の発言)

2025年3月 第34回:令和7年度要望の「見送り」報告

第34回の資料3は、2024年8月末に出した令和7年度税制改正要望と、その結果を次のように記載しています。

上記を踏まえ、財形年金貯蓄・財形住宅貯蓄の加入開始可能年齢の見直し(55歳未満→65歳未満)について検討を行い、その結果等を踏まえて、税制上の所要の措置を講ずることを、令和7年度税制改正要望として提出。

非課税措置の管理のための実務上の課題があることなどから、今回の見直しは見送ることとしたが、引き続き見直しを検討していく。

(出典:第34回 資料3「財形制度をめぐる状況について」10ページ)

「実務上の課題」について、同じ資料の11ページは次のように説明しています。

財形年金・財形住宅の加入開始可能年齢を現行(55歳未満)から引き上げた場合、財形年金の「据置期間」や「払出期間」中の転職時に、「二重契約」や「限度額超えの財形の非課税措置の適用」が可能となる。

(出典:第34回 資料3 11ページ)

委員と事務局のやりとりは次のとおりです。

今回の見直しは見送ることとしたが、引き続き見直しを検討していくと先ほどの御報告にございました。早急な対応を強く要望するとともに、具体的にどのようなスケジュールで、また、どのような場で検討されるかをお聞かせいただきたいと思います。

(出典:第34回 議事録。南部委員〈労働者代表〉の発言)

ただ、いつまでにやるかという部分につきましては検討状況いかんというところもあると思いますので、この場でなかなか申し上げにくいところではあります。

(出典:第34回 議事録。小林勤労者生活課長の発言)

2026年3月 第35回:金融機関ヒアリングと、引上げを求める意見

第35回の資料5は、見送り後の対応を次のように記載しています。

上記を踏まえ、財形年金貯蓄・財形住宅貯蓄の加入開始可能年齢の見直し(55歳未満→65歳未満)について必要な事務手続きのあり方について検討を行うとともに、主な金融機関等にヒアリングを実施。

ヒアリングの結果等を踏まえ、課題を精査し、引き続き検討。

(出典:第35回 資料5「財形制度をめぐる状況について」16ページ)

ヒアリングで金融機関から出た意見として、資料には次の記載があります。

金融機関にとって事務負担の増加やシステム改修の必要性に関する懸念があり、仮に実施するのであれば金融機関の状況に十分配慮してほしい。

(出典:第35回 資料5 17ページ)

この回の議事録では、引上げを求める発言と、進め方への注文の両方が出ています。

このように、財形貯蓄制度がより多くの勤労者の方々に御利用いただけるように、非課税財形の加入開始年齢引上げに加えまして、非課税限度額の引上げを切に要望するところでございます。

(出典:第35回 議事録。杉山委員〈労働者代表〉の発言)

2点目は、非課税限度額の引上げです。これについても何十年も据え置かれてきています。昨今の物価高、そして、住宅価格の高騰ということを踏まえると、現在の限度額は不十分だと思います。

(出典:第35回 議事録。仁平委員〈労働者代表〉の発言)

制度見直しのタイミングには来ているけれども、どこから着手していくかといったことを具体的に詰めていく上では、具体的な調査を、加入者への調査もそうですし、制度を変える上で影響がある金融機関、あるいは事業者サイドの手続の部分といったところも全て洗い出すことが必要ではないかなと感じました。

(出典:第35回 議事録。木村委員〈使用者代表〉の発言)

なお、加入年齢の引上げに伴って、財形制度への二重加入をどのように防いでいくかということも考えなければいけないと思っています。確認作業に関して、金融機関から事務負担増加への懸念の声も上がっていますので、そういったところにも配慮して検討をお願いしたいと思います。

(出典:第35回 議事録。大橋委員〈使用者代表〉の発言)

特に我々の産業につきましては財形取扱金融機関というところでもございますので、こういったシステム改修というところにつきましても極力負担のない形というところ、難しいところもあると思いますが、こういった御意見も踏まえながら、ぜひこれからも前向きに御議論いただけたらなと思ってございますので、よろしくお願いいたします。

(出典:第35回 議事録。松田委員〈労働者代表〉の発言。松田委員は同じ発言で、加入開始年齢の引上げに賛成の立場だと述べています)

事務局は次のように答えています。

事務局としても課題を整理させていただいた上で、また、分科会での議論のあり方も含めて、今後の開催のあり方について皆様と御議論をさせていただければと思っております。

(出典:第35回 議事録。安達勤労者生活課長の発言)

2026年7月 第36回:論点案と「12月頃 とりまとめ」

第36回で事務局が示した論点案(資料1)のうち、加入開始可能年齢と非課税限度額の部分は次のとおりです。

非課税となる財形貯蓄(財形年金貯蓄・財形住宅貯蓄)の加入開始可能年齢は55歳未満となっているが、高年齢者雇用安定法における高年齢者に関する制度の見直しや高年齢者の就業期間の長期化や転職等の就業形態の多様化など、高齢期の就業の状況の変化などを踏まえ、加入開始可能年齢の上限のあり方についてどのように考えるか。

財形貯蓄の非課税限度額は、年金・住宅を合算して550万円が上限とされているが、平成6年に行われた前回の上限額の引上げからの物価や賃金の情勢や住宅価格の高騰などの社会・経済状況を踏まえ、非課税限度額の上限のあり方についてどのように考えるか。

(出典:第36回 資料1「財形制度に関する今後の検討における主な視点」3ページ)

論点案にはこのほか、金融機関や事業主の都合による預替え(ポータビリティ)、財形住宅貯蓄の払出し要件、財形持家融資のあり方、事務の簡素化が挙げられています。資料1は、制度創設からの改正の経緯も一覧にしています。

1971年の財形法施行から2021年の手続きの電子化までの財形制度の主な改正を年ごとに並べた表。非課税限度額は1975年に100万円から500万円、1994年に500万円から550万円に引上げ
出典:厚生労働省 第36回労働政策審議会勤労者生活分科会 資料1「財形制度に関する今後の検討における主な視点」1ページ

第36回資料2には、2026年3月27日に閣議決定された住生活基本計画(全国計画)の抄録も付いており、施策例に次の記載があります。

勤労者財産形成住宅貯蓄制度の活用など、関連制度も踏まえた住宅取得資金の頭金等の積立支援策の検討

(出典:第36回 資料2 18ページ)

議論の進め方(資料4)では、個別の論点を順に検討し、「12月頃」に取りまとめるとされています。

令和8年7月に分科会での議論とヒアリングを始め、以降に高齢期の就業、非課税限度額、財形住宅貯蓄、財形持家融資、事務の簡素化などの論点を順次検討し、12月頃にとりまとめるという進め方の案
出典:厚生労働省 第36回労働政策審議会勤労者生活分科会 資料4「勤労者生活分科会における議論の進め方(案)」

取りまとめについて、事務局は次のように説明しています。

今回本格的に議論するのが1回目ということですので、まずはこういう形で委員の皆様にいろいろな御意見を伺う中で、論点の整理を図っていきたいと思います。今日の論点のペーパーのとおり現時点では「どう考えるか」となっておりますが、一定の論点が整理できた段階で、最終的には年末に向けて分科会としての意見の取りまとめを行っていきたいと考えているところでございます。

(出典:第36回 議事録。安達勤労者生活課長の発言)

ヒアリングでは、労働金庫連合会が次の3点を要望しました。

1つ目が財形非課税契約時の年齢制限(55歳未満)の引上げ、2つ目は非課税限度額550万円の引上げ、3つ目は非課税財形のポータビリティの拡充、預替え対象の拡大、以上3点の要望をお願いして労金からの説明を終わらせていただきます。

(出典:第36回 議事録。労働金庫連合会の発言)

委員の主な発言は次のとおりです。

今回の資料で論点としてお示しいただいた加入開始可能年齢の引上げや非課税限度額の引上げについては、いずれも前向きに検討を進めることが適当であると思っております。 他方で、加入開始可能年齢の引上げに伴い、二重加入の防止策の検討にあたっては、受付金融機関の事務負担が最小限となるように留意していただきたいと思います。

(出典:第36回 議事録。大橋委員〈使用者代表〉の発言)

やはり財形年金貯蓄、財形住宅貯蓄の年齢制限については引き上げるべきだと考えておりますし、非課税限度額につきましては30年以上変更がないということでございますので、これも引上げをすべきだと考えております。

(出典:第36回 議事録。佐保委員〈労働者代表〉の発言)

財形貯蓄の限度額を今回引き上げたとしても、この限度額がそのままであれば4,000万円を超えられませんので、こういった制度改正についても必要なのかなと思っています。

(出典:第36回 議事録。浪波委員〈公益代表〉の発言。財形持家融資の限度額〈財形貯蓄残高の10倍、最高4,000万円〉についての発言)

今いただいている論点に対して軽重をつけて時間配分して検討していけるといいのではないかなと感じておりますので、御検討いただけるとありがたいです。

(出典:第36回 議事録。渡辺委員〈使用者代表〉の発言)

中退共の見直しとの関係

中小企業退職金共済(中退共)制度の見直しは、勤労者生活分科会の下にある中小企業退職金共済部会で議論されています。2026年6月30日の第93回部会で、事務局は次のように説明しました。

それを踏まえて中小企業退職金共済、特定業種退職金共済、それぞれ論点について順次検討するということで、12月頃の取りまとめを目指して議論してはどうかということで案をお示しさせていただいたところでございます。

(出典:中小企業退職金共済部会 第93回 議事録。安達勤労者生活課長の発言)

部会の資料5には、掛金月額のあり方、加入できる事業主の範囲、特定業種退職金共済の掛金日額のあり方などが論点として並んでいます。読んだ範囲の部会資料・議事録には、財形制度の見直しとの関係を述べた記載はありませんでした。両者は、次の令和9年度税制改正要望で1つの項目にまとめられています。

令和9年度税制改正要望(2026年8月31日公表)

高齢期における就業の進展や賃金の上昇、住宅価格の高騰等を踏まえ、退職後も見据えて勤労者の生活の安定に資する制度となるよう、労働政策審議会において、財形年金貯蓄・財形住宅貯蓄の加入開始可能年齢(現行は55歳未満)や非課税限度額の引上げを含む財形制度の各種要件・手続き等の見直しについて検討を行っている。

中退共制度及び財形制度のあり方に係る労働政策審議会における検討結果を踏まえて税制上の所要の措置を講ずる。

(出典:厚生労働省「令和9年度 主な税制改正要望の概要」3ページ)

令和7年度の要望は引上げ後の年齢(65歳未満)を示していました。令和9年度の要望の資料には、引上げ後の年齢や限度額の数字は書かれていません。

論点になったこと

  • 加入開始可能年齢の引上げ:読んだ4回の議事録では、労働者代表・使用者代表・公益代表の各委員から、引上げや前向きな検討を求める発言が出ています。引上げそのものに反対する発言は、読んだ範囲にはありませんでした。一方、事務局資料は令和7年度の見送りの理由を「非課税措置の管理のための実務上の課題」とし、二重契約などを防ぐ仕組みが必要だとしています。金融機関へのヒアリングでは事務負担やシステム改修への懸念が示され、委員からも金融機関の負担への配慮を求める発言がありました(大橋委員、松田委員)。
  • 非課税限度額の引上げ:物価や住宅価格の上昇を理由に引上げを求める発言が続いています(杉山委員、仁平委員、佐保委員など)。論点案は、1994(平成6)年の引上げ以降の状況を踏まえて「上限のあり方」を問う形です。財形持家融資の限度額との関係も指摘されました(浪波委員)。
  • 進め方:12月頃の取りまとめに向けて、論点に軽重をつけることを求める発言がありました(渡辺委員)。

いまどの段階か

2026年7月15日の第36回で、分科会としての本格的な議論が始まった段階です。論点案は「どう考えるか」という問いの形で、引上げ後の年齢や限度額の数字は、読んだ資料には示されていません。2026年9月12日に確認した時点で、分科会のページに載っている最新の回は第36回です。

厚生労働省は、この検討結果を踏まえて税制上の措置を講ずるとする令和9年度税制改正要望を、2026年8月31日に公表しています。

この先の流れ

  • 勤労者生活分科会:資料4では、個別の論点を順次検討し、12月頃にとりまとめるとされています。次回の開催日は、確認した時点で分科会のページに載っていません。中退共部会も12月頃の取りまとめを目指すと説明されています。
  • 税制:非課税限度額は租税特別措置法に規定されています。税制改正要望の扱いは、例年12月に与党が取りまとめる税制改正大綱で示されます。
  • 法改正:「55歳未満」は財形法第6条の文言です。第36回のヒアリングの質疑で、仁平委員は次のように述べています。

財形年金貯蓄については加入開始可能年齢の引上げが必要であること、そして、非課税限度額の550万については引上げが必要であること、そのための法改正をすべきではないかという意見がでております。

(出典:第36回 議事録。仁平委員〈労働者代表〉の発言)

法案を国会に出す時期は、読んだ資料・議事録には書かれていません。

経過

  1. 第33回 勤労者生活分科会。委員が加入年齢制限(55歳未満)の引上げを要望し、事務局が年齢要件などの見直しを検討すると回答
  2. 第34回。令和7年度税制改正要望(加入開始可能年齢55歳未満→65歳未満)での見直しを見送ったと事務局が報告
  3. 第35回。金融機関等へのヒアリング結果を事務局が報告。委員から加入開始年齢・非課税限度額の引上げを求める発言
  4. 中小企業退職金共済部会 第93回。中退共制度の見直しの議論を始め、12月頃の取りまとめ案を提示
  5. 第36回。事務局が論点案と議論の進め方(12月頃とりまとめ)を提示し、有識者等からヒアリング
  6. 厚生労働省が令和9年度税制改正要望で、労働政策審議会の検討結果を踏まえた税制上の措置を要望

出典

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