厚生労働省中央最低賃金審議会・地方最低賃金審議会

最低賃金はどうやって決まるのか 中央最低賃金審議会の目安から、都道府県ごとの決定・発効まで(2026年度の実例つき)

省庁
厚生労働省
会議体
中央最低賃金審議会・地方最低賃金審議会

ポイント

  • 都道府県ごとの最低賃金(地域別最低賃金)は、厚生労働大臣の諮問 → 中央最低賃金審議会の「目安」の答申 → 地方最低賃金審議会の答申 → 異議の申出の手続 → 都道府県労働局長の決定・官報公示 → 発効 の順に決まります。2026年度(令和8年度)は、6月26日に諮問、7月28日に目安の答申、9月3日に全都道府県の答申の取りまとめが公表され、10月1日から12月2日までの間に順次発効する予定です。
  • 「目安」は地方最低賃金審議会の審議の参考として示されるもので、厚生労働省の資料では地方の審議を拘束しないとされています。金額を決めるのは、地方最低賃金審議会の意見を聴いた都道府県労働局長です。
  • 2026年度の目安はAランク54円、Bランク56円、Cランク56円。地方最低賃金審議会の答申では47都道府県で54円〜65円の引上げとなり、全国加重平均額は1,177円でした。

決まるまでの流れ

  1. 厚生労働大臣が中央最低賃金審議会に「目安」を諮問2026年度は6月26日の第74回中央最低賃金審議会(2025年度は7月11日の第70回)。根拠の資料: 厚生労働省「中央最低賃金審議会」開催一覧、「目安制度の概要」(参考1)。
  2. 目安に関する小委員会で審議諮問の日に設置され、2026年度は6月26日から7月28日までに6回開かれました(2025年度は7回)。根拠の資料: 同小委員会の開催一覧。
  3. 中央最低賃金審議会が目安を答申2026年度は7月28日の第75回(2025年度は8月4日の第71回)。ランクごとの引上げ額の目安が地方最低賃金審議会に示されます。
  4. 地方最低賃金審議会が審議・答申(2026年度は9月3日までに全都道府県で答申)都道府県労働局長の諮問を受けて専門部会で審議します(最低賃金法第10条第1項・第25条第2項)。例: 栃木は7月2日に諮問、8月5日に答申。高知は6月30日に諮問、8月28日に答申。
  5. 答申の要旨の公示と異議の申出(公示の日から15日以内)最低賃金法第11条、施行規則第7条・第8条。例: 高知は申出締切日を9月14日としています。
  6. 都道府県労働局長が決定し、官報で公示最低賃金法第10条第1項・第14条第1項、施行規則第9条。例: 静岡は9月4日に決定し、官報公示日は9月15日(予定)。
  7. 発効(公示の日から起算して30日を経過した日、または決定で定めた日)最低賃金法第14条第2項。例: 静岡は10月15日、栃木は10月1日(予定)。
左に中央最低賃金審議会の目安審議(諮問、調査審議、答申)、右に地方最低賃金審議会の地域別最低賃金審議(諮問、調査審議、答申、異議申出に係る調査審議、決定、決定の公示、発効)を並べ、中央の答申から地方の調査審議へ「目安を提示」の矢印を引いた流れ図
出典:厚生労働省「地域別最低賃金の改正手続の流れ」(令和8年9月3日の報道発表「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」の参考資料)

根拠の法律: 最低賃金法

考慮する3つの要素(第9条)

地域別最低賃金は、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない。

前項の労働者の生計費を考慮するに当たつては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする。

(出典:最低賃金法 第9条第2項・第3項、e-Gov法令検索)

誰が決めるか(第10条)

厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、一定の地域ごとに、中央最低賃金審議会又は地方最低賃金審議会(以下「最低賃金審議会」という。)の調査審議を求め、その意見を聴いて、地域別最低賃金の決定をしなければならない。

(出典:最低賃金法 第10条第1項)

審議会の意見によりがたいときは、理由を付けて再審議を求めなければなりません(同条第2項)。一つの都道府県労働局の管轄区域だけに関わる事案は、厚生労働大臣の職権とされたものを除き、その都道府県労働局長が決定します(第30条第1項)。

異議の申出(第11条)

審議会の意見が出ると、労働局長はその要旨を公示します(第11条第1項)。都道府県労働局長の事案では、労働局のウェブサイトへの掲載(難しい場合は掲示場への掲示)で公示すると施行規則第7条が定めています。

前条第一項の規定による最低賃金審議会の意見に係る地域の労働者又はこれを使用する使用者は、前項の規定による公示があつた日から十五日以内に、厚生労働大臣又は都道府県労働局長に、異議を申し出ることができる。

厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、第一項の規定による公示の日から十五日を経過するまでは、前条第一項の決定をすることができない。

(出典:最低賃金法 第11条第2項・第4項)

異議の申出があったときは、労働局長は審議会に意見を求めなければなりません(同条第3項)。

公示と発効(第14条)

第十条第一項の規定による地域別最低賃金の決定及び第十二条の規定による地域別最低賃金の改正の決定は、前項の規定による公示の日から起算して三十日を経過した日(公示の日から起算して三十日を経過した日後の日であつて当該決定において別に定める日があるときは、その日)から、同条の規定による地域別最低賃金の廃止の決定は、同項の規定による公示の日(公示の日後の日であつて当該決定において別に定める日があるときは、その日)から、その効力を生ずる。

(出典:最低賃金法 第14条第2項)

法第十四条第一項及び第十九条第一項の規定による公示は、官報に掲載することによつて行うものとする。

(出典:最低賃金法施行規則 第9条)

特定最低賃金(第15条・第16条)

地域別最低賃金とは別に、一定の事業や職業に適用される「特定最低賃金」があります。労働者や使用者の代表者の申出を受け、労働局長などが必要と認めるときに審議会の意見を聴いて決めます(第15条)。その額は地域別最低賃金の額を上回るものでなければなりません(第16条)。静岡労働局は、2026年度の静岡県最低賃金の決定にあわせて次のように案内しています。

※ この改正に伴い、静岡県内の特定の産業に定められた最低賃金(静岡県特定最低賃金) ○「鉄鋼、非鉄金属製造業最低賃金」(時間額1,117円) ○「はん用機械器具、生産用機械器具、業務用機械器具、輸送用機械器具製造業」(時間額1,133円) が適用される労働者については、令和8年10月15日以降、それぞれの特定最低賃金が改正されるまでの間、静岡県最低賃金額(時間額1,154円)以上の支払が必要となります。

(出典:静岡労働局「令和8年度「静岡県最低賃金」の改正を決定しました」)

中央最低賃金審議会と地方最低賃金審議会

厚生労働省に中央最低賃金審議会を、都道府県労働局に地方最低賃金審議会を置く。

最低賃金審議会は、政令で定めるところにより、労働者を代表する委員、使用者を代表する委員及び公益を代表する委員各同数をもつて組織する。

(出典:最低賃金法 第20条・第22条)

地方最低賃金審議会の委員の数は、十五人とする。ただし、東京地方最低賃金審議会及び大阪地方最低賃金審議会にあつては、十八人とする。

(出典:最低賃金審議会令 第2条第2項。同条第1項は中央最低賃金審議会の委員を18人としています)

労働者代表・使用者代表の委員は、関係労働組合・関係使用者団体に候補者の推薦を求めて任命します(同令第3条)。会長は公益を代表する委員の中から委員が選挙します(法第24条第2項)。2026年6月1日付の中央最低賃金審議会委員名簿では、公益委員・労働者側委員・使用者側委員が6人ずつで、令和8年7月28日の報道発表では会長は藤村博之氏(独立行政法人労働政策研究・研修機構理事長)です。

「目安」とランク

昭和53年度から、地域別最低賃金の全国的整合性を図るため、中央最低賃金審議会が、毎年、地域別最低賃金額改定の「目安」を作成し、地方最低賃金審議会へ提示している。

また、目安は、地方最低賃金審議会の審議の参考として示すものであって、これを拘束するものでないこととされている。

(出典:厚生労働省「最低賃金制度と地域別最低賃金額の改定に係る目安制度の概要」(参考1))

注.都道府県の経済実態に応じ、全都道府県をABCの3ランクに分けて、引上げ額の目安を提示している。現在、Aランクで6都府県、Bランクで28道府県、Cランクで13県となっている。

(出典:厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」)

2026年度(令和8年度)の実例

目安の答申(7月28日)

1 令和8年度地域別最低賃金額改定の目安については、その金額に関し意見の一致をみるに至らなかった。

(出典:中央最低賃金審議会「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)」)

答申は、公益委員見解(別紙1)と小委員会報告(別紙2)を地方最低賃金審議会に示すとしています。公益委員見解が示した目安は次の表のとおりです。

令和8年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安の表。Aランク(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪)54円、Bランク(北海道、宮城など28道府県)56円、Cランク(青森、岩手など13県)56円
出典:厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について 資料(全体版)」5ページ(別紙1 公益委員見解)

小委員会報告には、労働者側委員・使用者側委員のいずれも、公益委員見解に「不満の意を表明した」と書かれています。報道発表によると、目安どおりに引き上げた場合の全国加重平均は1,176円(上昇額55円、引上げ率4.9%)です。

地方最低賃金審議会の答申(9月3日に全都道府県分を公表)

厚生労働省の取りまとめでは、引上げ額は54円〜65円、答申での全国加重平均額は1,177円(昨年度1,121円)です。別紙の答申状況によると、最高額は東京の1,280円、最低額は宮崎の1,085円です。

答申された改定額は、都道府県労働局での関係労使からの異議申出に関する手続を経た上で、都道府県労働局長の決定により、令和8年10月1日から令和8年12月2日までの間に順次発効される予定です。

(出典:厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」令和8年9月3日)

各地の手続の例

栃木地方最低賃金審議会は8月5日に時間額1,125円(57円引上げ)を答申し、答申文は効力発生の日を令和8年10月1日としています。栃木労働局の報道発表は、今後「異議申出の公示など諸手続き」を経て決定されると説明しています。

今後、この答申の内容についての異議申出(申出締切日:9月14日)に関する諸手続を経て、高知県最低賃金が改正されることになる。

(出典:高知労働局「令和8年度高知県最低賃金の改正答申について」。答申は8月28日、時間額1,086円、効力発生日は10月29日(予定))

静岡地方最低賃金審議会の答申に基づき、次のとおり改正することを決定し、官報公示の手続きを行いました。(官報公示日:令和8年9月15日(予定))

(出典:静岡労働局「令和8年度「静岡県最低賃金」の改正を決定しました」。決定は令和8年9月4日、時間額1,154円、発効日は令和8年10月15日)

厚生労働省の「地域別最低賃金の全国一覧」のページは、2026年9月13日の確認時点で令和7年度の一覧を掲載しており、令和8年度の決定額・発効日の全国一覧はまだ載っていません。

前年度(令和7年度)との比較

令和7年度(2025年度) 令和8年度(2026年度)
目安の諮問 2025年7月11日(第70回) 2026年6月26日(第74回)
目安に関する小委員会 7回 6回
目安の答申 2025年8月4日(第71回) 2026年7月28日(第75回)
ランクごとの目安 A63円、B63円、C64円 A54円、B56円、C56円
目安どおりの場合の全国加重平均 1,118円 1,176円
実際の全国加重平均 1,121円(改定後) 1,177円(答申の段階)
最高額・最低額 東京1,226円・高知、宮崎、沖縄1,023円(改定後) 東京1,280円・宮崎1,085円(答申の段階)
発効日 2025年10月1日(栃木)〜2026年3月31日(秋田) 2026年10月1日〜12月2日の間に順次(予定)

(出典:厚生労働省の令和7年度・令和8年度の目安の報道発表、「令和7年度地域別最低賃金全国一覧」、「平成14年度から令和7年度までの地域別最低賃金改定状況」、令和8年9月3日の報道発表と別紙)

2026年度の公益委員見解は、令和7年度に39道府県で目安額を上回る答申が出たこと、11月以降を発効日とする地域が27府県あったことを記しています。

最低賃金と「106万円の壁」

令和7年度の改定では、最低額は1,023円(高知・宮崎・沖縄)で、発効日が最も遅かったのは秋田の2026年3月31日でした。短時間労働者の厚生年金の賃金要件(月額8.8万円)の撤廃日を定める政令について、厚生労働省年金局の概要は次のように書いています。

令和8年4月1日以降は全都道府県で最低賃金が1,016円以上となり、労働時間要件に該当しなければ自動的に賃金要件にも該当しなくなったこと等を踏まえ、令和8年10月1日を、賃金要件の撤廃に係る規定の施行日とするための施行期日を定める政令を別途制定することとしている。

(出典:厚生年金保険法施行令等の一部を改正する政令案について(概要) 厚生労働省年金局年金課)

年金部会での議論からこの政令までの経過は、いわゆる『106万円の壁』は年金部会でどう議論され、どう決まったか(経緯まとめ)にまとめています。

出典

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