金融庁›金融審議会 保険制度ワーキング・グループ(仮称)
金融審議会のワーキング・グループで、いま何が議論されているか(2026年) 保険制度WG(仮称)と生命保険のセーフティネット
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金融審議会では、2026年8月31日の第57回総会で、金融担当大臣から2つの諮問がありました。そのうち「保険制度の在り方に関する検討」について、事務局資料は「保険制度ワーキンググループ(仮称)」を設置するとしています。検討課題は、生命保険会社が破綻した場合に備えるセーフティネット制度(政府補助を含む)の在り方と、再保険キャプティブ制度の創設の2つです。
生命保険契約者保護機構に対する政府補助の特例は、保険業法の附則で令和9(2027)年3月31日までの時限措置と定められています。この記事では、2026年に金融審議会のワーキング・グループ(WG)で何が動いたかを最初に一覧にし、そのうえで保険制度WG(仮称)の検討課題を、諮問文・事務局資料・法律の条文でたどります。
2026年の金融審議会のワーキング・グループ
金融庁の「議事録・資料等」と「答申・報告書等」のページ(2026年9月13日に確認)に載っている、2026年に動きがあったWGは次のとおりです。
| WG | 2026年の動き(金融庁のページの記載) |
|---|---|
| 暗号資産制度に関するWG、市場制度WG、地域金融力の強化に関するWG、ディスクロージャーWG、サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するWG | 2月3日の第56回総会で、5つのWGの報告を事務局が説明。サステナビリティ情報のWGの報告は1月8日公表(ほかの4つは2025年12月公表) |
| ディスクロージャーWG(令和7事務年度〜令和8事務年度) | 5月18日に第5回、9月4日に第6回を開催 |
| 成長企業への資金供給の在り方等に関するWG | 8月31日の第57回総会で諮問。第1回は9月16日と掲載 |
| 保険制度WG(仮称) | 8月31日の第57回総会で諮問。WGとしての会合は、確認した時点で掲載なし |
ディスクロージャーWGの第5回の事務局資料は、2026年の審議事項を次のように記載しています。
2025年12月26日公表の本WG報告では、今後の審議事項として、有価証券報告書の記載事項の整理について、本年春以降に審議を行う旨記載されている。
(出典:ディスクロージャーワーキング・グループ 第5回 資料1「事務局説明資料」2ページ)
成長企業への資金供給の在り方等に関するWGについての諮問は、次の内容です。
資金供給主体の多様化等を図る観点から、事業者向け貸付けに係る貸金業の規制の柔構造化等について検討を行うこと。
(出典:第57回総会 諮問事項)
国会では、第221回国会に金融庁が提出した2つの法律案が成立しています。「金融機能の強化のための特別措置に関する法律等の一部を改正する法律案」は2026年2月27日提出・4月24日成立、「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案」は4月10日提出・7月15日成立です(金融庁「国会提出法案等」、衆議院の審議経過情報)。後者の概要には、次の記載があります。
「暗号資産」、「サステナビリティ情報の開示・保証」、「スタートアップへの資金供給」、「不公正取引規制」等に関する制度を整備
(出典:金融庁「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案の概要」)
このうち、生命保険の契約者保護の制度を検討課題に含み、まだ審議が始まる前の段階にあるのが保険制度WG(仮称)です。以下はこのWGについてまとめます。
決まるまでの流れ(時系列)
- 平成12(2000)年 政府補助の特例を措置第57回総会の資料2によると、その後、期限の延長を計6回繰り返しています。
- 2022年2月1日 保険業法の一部を改正する法律案を国会に提出(第208回国会)政府補助の期限を「令和四年三月三十一日」から「令和九年三月三十一日」に改める内容。
- 2022年3月31日 成立・公布附則に、施行後5年を目途とする検討の規定。
- 2026年4月17日 「企業のリスクマネジメントの高度化に向けた検討会」報告書を公表キャプティブの活用等の検討を指摘(資料2による)。
- 2026年7月21日 日本成長戦略を閣議決定生命保険契約者保護機構に対する政府補助の在り方と、自グループのリスクのみを引き受ける保険会社の制度創設の検討を記載(資料2の抄録による)。
- 2026年8月31日 第57回金融審議会総会(第45回金融分科会との合同会合)金融担当大臣が「保険制度の在り方に関する検討」を諮問。事務局が保険制度WG(仮称)の設置と検討課題を説明。
- 2026年8月31日 金融庁の令和9年度税制改正要望「保険業に関する制度の見直しに伴う所要の措置」を事項要望として提出。
- 2027年3月31日 政府補助の特例の期限保険業法附則第1条の2の14に規定。
議事録と資料の原文
2026年8月31日 第57回総会:金融担当大臣の諮問
諮問事項は、金融担当大臣 片山さつき氏から金融審議会の神作裕之会長にあてた文書です。
金融庁設置法第7条第1項第1号により下記のとおり諮問する。
近年の企業や家計をとりまく不確実性の高まりを踏まえ、企業の成長投資を後押しするとともに、国民生活の安全安心を確保するための保険機能を強化する観点から、再保険キャプティブ制度の創設や、生命保険のセーフティネット制度の在り方について検討を行うこと。
(出典:第57回総会 諮問事項(2026年8月31日))
議事次第によると、この日の総会は「政務挨拶及び諮問」「討議」の順で進められました。第57回総会の議事録は、2026年9月13日に確認した時点で金融庁のページに載っていません。開催通知には次の記載があります。
※議事録は、会議後、金融庁ウェブサイトにて公表されます。
(出典:第57回金融審議会総会・第45回金融分科会合同会合の開催について)
事務局資料:WG(仮称)の背景と検討課題
第57回総会の資料2は、WG(仮称)を設置する背景のひとつとして、政府補助の期限を挙げています。
生命保険契約者保護機構は、生命保険会社が破綻した場合に、業界負担の財源から保険契約の移転時等における資金援助等を行うことができるところ、保険契約者等の保護を的確に行うため、政府補助の特例措置が時限的に設けられており、令和9年3月末に期限を迎えることから、制度の在り方を検討する必要。
検討課題は次の2つです。
損害保険業における再保険キャプティブ制度の創設について、損害保険を活用した企業のリスク移転が従来と同様の条件では成立しにくくなっていること、そうした中で企業のリスクマネジメントの高度化や成長投資の後押しを図る観点からどう考えるか。
生命保険会社が破綻した場合に備えるセーフティネット制度(政府補助を含む)の在り方について、これまで時限延長を繰り返してきた経緯や近年の社会経済情勢の変化を踏まえどう考えるか。
(出典:第57回総会 資料2「保険制度の在り方に関する検討について(保険制度ワーキンググループ(仮称)の設置について)」1ページ)
生命保険のセーフティネット制度のしくみ
資料2の3ページは、生命保険契約者保護機構の補償財源を図で示しています。業界が負担する①事前積立(積立限度額4,000億円。2022年3月末で事前積立完了)と②政府保証付借入(借入限度額4,600億円)を合わせたものが「業界負担枠」で、資金援助等の規模がこれを超える場合に、一定の要件のもとで③政府補助ができるという構成です。
生命保険契約者保護機構が行う資金援助等に対して行われる政府補助の特例は、平成12年に措置されてから現在に至るまで、その時々の生命保険を巡る状況に鑑み、期限の延長を計6回繰り返し、令和9年3月末までの時限措置とされている。
業界負担のみで資金援助等を賄うとすると、生保会社の財務状況を著しく悪化させ、保険業に対する信頼性の維持が困難となり、ひいては国民生活又は金融市場に極めて重大な支障が生じるおそれが認められる場合(保険業法附則第1条の2の14)。現在に至るまで発動されたことはない。
(出典:第57回総会 資料2 3ページ。2つ目は図の注)
根拠になっている保険業法の規定は次のとおりです。
政府は、生命保険契約者保護機構がその会員(平成十八年四月一日から令和九年三月三十一日までの間に第二百四十二条第一項に規定する管理を命ずる処分を受けたものその他政令で定めるものに限る。次条第三項において「特例会員」という。)に係る資金援助その他の業務に要した費用を第二百六十五条の三十三第一項の規定により当該生命保険契約者保護機構の会員が納付する負担金のみで賄うとしたならば、当該生命保険契約者保護機構の会員の財務の状況を著しく悪化させることにより保険業に対する信頼性の維持が困難となり、ひいては国民生活又は金融市場に極めて重大な支障が生じるおそれがあると認める場合(政令で定める日における当該生命保険契約者保護機構の借入残高に、当該生命保険契約者保護機構が当該費用を借入れにより賄うとした場合の当該借入れの額として政令で定める額を加えた額が当該生命保険契約者保護機構の長期的な収支を勘案して政令で定める額を超える場合に限る。)には、予算で定める金額の範囲内において、当該生命保険契約者保護機構に対し、当該費用(特定業務に要したものに限る。)の全部又は一部に相当する金額を補助することができる。
(出典:保険業法 附則第1条の2の14第1項。e-Gov法令検索)
2022年:前回の期限延長
前回の延長は、2022年の第208回国会に提出された「保険業法の一部を改正する法律案」によるものです。改正の本文は1文です。
附則第一条の二の十四第一項中「令和四年三月三十一日」を「令和九年三月三十一日」に改める。
保険業を取り巻く経済社会情勢の変化を踏まえ、保険契約者等の保護を的確に行うため、生命保険契約者保護機構に対する政府補助の措置の期限延長を行う必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
同じ法律案の附則には、見直しの検討の規定があります。
政府は、この法律の施行後五年を目途として、生命保険契約者保護機構の財務の状況、保険会社の経営の健全性の状況、保険業を取り巻く経済社会情勢の変化等を勘案し、必要があると認めるときは、この法律による改正後の保険業法の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
(出典:衆議院 第208回国会 閣法第10号「保険業法の一部を改正する法律案」提出時法律案)
衆議院の審議経過情報によると、この法律案は2022年2月1日に衆議院が受理し、3月24日に衆議院本会議で可決(反対会派は日本共産党)、3月31日に参議院本会議で可決され、同日公布されました。金融庁が国会提出時に作った概要には、事前積立について「毎年330億円積立」「積立額3,698億円(2021年3月末時点)」と記載されています。
2026年7月21日 日本成長戦略(資料2の抄録)
資料2は、閣議決定された日本成長戦略のうち、WG(仮称)の2つの検討課題に関係する部分を抜き出しています。
国民に安全・安心なセーフティネットを持続的に提供するため、生命保険会社の財務健全性等を確保しつつ、生命保険契約者保護機構に対する不測の事態※に備えた政府補助の在り方を検討する。
企業のリスクマネジメント高度化と投資余力の確保を後押しすべく、自グループのリスクのみを引き受ける保険会社の制度創設について検討する。
(出典:第57回総会 資料2 4ページ「日本成長戦略(令和8年7月21日閣議決定)(抄)」)
再保険キャプティブ制度の現状
もうひとつの検討課題である再保険キャプティブ制度について、資料2は現状を次のように説明しています。
現状では、国内には再保険キャプティブ制度が整備されておらず、国内で同一の企業グループのリスクのみを引き受ける再保険キャプティブ業務を行うためには、保険会社の免許の取得が必要。
しかしながら、保険会社の免許の取得は、同業務の特性に照らして負担が重く、相当数の国内の企業グループは、米国ハワイ州等の国外に子会社を設立して同業務を行っている。
(出典:第57回総会 資料2 2ページ)
資料2が抄録している「企業のリスクマネジメントの高度化に向けた検討会」報告書(2026年4月17日)には、次の記載があります。
契約者保護や健全性確保の観点も踏まえながら、海外直接付保やキャプティブの利活用を含めた政策の検討を進めるべきである。
(出典:第57回総会 資料2 5ページ)
金融庁の令和9年度税制改正要望
金融庁が2026年8月31日に公表した令和9年度税制改正要望の「その他の要望項目」には、次の項目があります。
保険業に関する制度の見直しに伴う所要の措置【事項要望】
(出典:金融庁「令和9(2027)年度税制改正要望について」7ページ)
総務省が公表している地方税の要望事項の様式では、要望理由が次のように書かれています。
保険業に関する制度等の見直しに伴い、現行の課税関係を踏まえ、必要に応じ、所要の措置を講ずること。
(出典:総務省「令和9年度地方税制改正(税負担軽減措置等)要望事項」金融庁 No.4)
どちらの資料にも、どの制度の見直しを指すのかは書かれていません。
論点になったこと
保険制度WG(仮称)は、2026年9月13日に確認した時点で会合が開かれておらず、WGの委員の発言はまだありません。第57回総会の議事録も公表前です。読んだ資料に示されている論点は次のとおりです。
- 政府補助の在り方:資料2は「これまで時限延長を繰り返してきた経緯や近年の社会経済情勢の変化」を踏まえた検討を求めています。日本成長戦略は「生命保険会社の財務健全性等を確保しつつ」政府補助の在り方を検討するとしています。2022年の改正法の附則は、生命保険契約者保護機構の財務の状況、保険会社の経営の健全性の状況、経済社会情勢の変化等を勘案した検討を定めています。
- 政府補助が使われた実績:資料2は、政府補助は「現在に至るまで発動されたことはない」と記載しています。
- 再保険キャプティブ制度の創設:国内で同じ業務を行うには保険会社の免許が必要で、その負担が重いため、国外に子会社を設立している企業グループがあると資料2は説明しています。
WG(仮称)の審議でどのような案が示されるかは、読んだ資料には書かれていません。
いまどの段階か
2026年8月31日に諮問があり、事務局がWG(仮称)の設置と検討課題を示した段階です。WGの正式な名称、委員の構成、第1回の開催日は、確認した時点で金融庁のページに載っていません(第57回総会で配られた名簿は、金融審議会の委員18名のものです)。
この先の流れ
- 金融審議会:保険制度WG(仮称)で審議されます。取りまとめの時期は、読んだ資料には書かれていません。
- 期限:生命保険契約者保護機構に対する政府補助の特例は、保険業法附則第1条の2の14で令和9(2027)年3月31日までとされています。前回2022年の延長は、保険業法の一部を改正する法律で期限の日付を改める形で行われました。今回の法律案を国会に出す時期は、読んだ資料には書かれていません。
- 税制:金融庁の事項要望「保険業に関する制度の見直しに伴う所要の措置」の扱いは、例年12月に与党が取りまとめる税制改正大綱で示されます。
経過
- 保険業法の一部を改正する法律案を国会に提出(生命保険契約者保護機構に対する政府補助の措置の期限を5年間延長する内容)
- 同法が成立・公布。政府補助の特例の期限が「令和九年三月三十一日」に
- 「企業のリスクマネジメントの高度化に向けた検討会」報告書を公表(キャプティブの活用等の検討を指摘)
- 日本成長戦略を閣議決定。生命保険契約者保護機構に対する政府補助の在り方と、自グループのリスクのみを引き受ける保険会社の制度創設の検討を記載
- 第57回金融審議会総会で金融担当大臣が「保険制度の在り方に関する検討」を諮問。事務局が保険制度ワーキンググループ(仮称)の設置と検討課題を説明
- 金融庁が令和9年度税制改正要望で「保険業に関する制度の見直しに伴う所要の措置」を事項要望
出典
- 金融庁 第57回金融審議会総会・第45回金融分科会合同会合 議事次第(2026年8月31日)(2026年9月13日取得)
- 第57回総会 資料2 説明資料(保険制度の在り方に関する検討について)(2026年9月13日取得)
- 第57回総会 諮問事項(2026年9月13日取得)
- 第57回総会 金融審議会委員名簿(2026年9月13日取得)
- 第57回金融審議会総会・第45回金融分科会合同会合の開催について(開催通知)(2026年9月13日取得)
- 金融審議会 議事録・資料等(一覧)(2026年9月13日取得)
- 金融審議会 答申・報告書等(一覧)(2026年9月13日取得)
- 保険業法(e-Gov法令検索)附則第1条の2の14(2026年9月13日取得)
- 衆議院 第208回国会 閣法第10号 保険業法の一部を改正する法律案(提出時法律案)(2026年9月13日取得)
- 衆議院 第208回国会 閣法第10号 審議経過情報(2026年9月13日取得)
- 金融庁 国会提出法案等(2026年9月13日取得)
- 保険業法の一部を改正する法律案の概要(第208回国会)(2026年9月13日取得)
- 第56回金融審議会総会・第44回金融分科会合同会合 議事次第(2026年2月3日)(2026年9月13日取得)
- 金融審議会 ディスクロージャーワーキング・グループ(2026年9月13日取得)
- ディスクロージャーワーキング・グループ 第5回 資料1 事務局説明資料(2026年9月13日取得)
- 金融審議会 成長企業への資金供給の在り方等に関するワーキング・グループ(2026年9月13日取得)
- 金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案の概要(第221回国会)(2026年9月13日取得)
- 衆議院 第221回国会 閣法第57号 審議経過情報(2026年9月13日取得)
- 金融機能の強化のための特別措置に関する法律等の一部を改正する法律案の概要(第221回国会)(2026年9月13日取得)
- 衆議院 第221回国会 閣法第7号 審議経過情報(2026年9月13日取得)
- 金融庁 令和9(2027)年度税制改正要望について(2026年9月12日取得)
- 総務省 令和9年度地方税制改正要望事項(金融庁)保険業に関する制度等の見直しに伴う所要の措置(2026年9月13日取得)