消費者庁令和8年版 消費者白書

令和8年版 消費者白書 特集は「デジタル化とAI技術の進展で変化する、私たちの消費取引」、2025年の消費生活相談は97.0万件

この記事のまとめ

  • 消費者庁は2026年6月12日に令和8年版消費者白書を公表し、特集は「デジタル化とAI技術の進展で変化する、私たちの消費取引」です。
  • 白書は、2025年の消費生活相談を97.0万件と記載し、前年(90.7万件)より増えて2018年に次ぐ件数としています。
  • 白書は、SNSが関係する相談を2025年に10万1,045件、消費者被害・トラブル推計額(既支払額)を約7.6兆円と記載しています。
  • 特集で白書は、サブスクリプション契約経験者の17.9%が解約トラブルに遭い、SNSチャットで勧誘を受けた人が18.4%と記載しています。
  • 白書で新しく何かが決まるものではなく、消費者法制度の在り方は消費者庁の消費者契約法検討会などで検討されています。
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令和8年版 消費者白書

消費者基本法などに基づく国会への報告として6月12日に公表

消費者庁のお知らせ「令和8年版消費者白書の公表について」の日付は2026年06月12日です。首相官邸の「令和8年6月12日(金)定例閣議案件」には、国会提出案件として次の2件が載っています。

令和7年度消費者政策の実施の状況について(決定)

(消費者庁)

令和7年度消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果の報告について(決定)

(出典:首相官邸「令和8年6月12日(金)定例閣議案件」)

白書の冒頭のページには「令和7年度 消費者政策の実施の状況」「令和7年度 消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果の報告」「第221回国会(特別会)提出」と書かれ、報告の根拠が次のように記載されています。

この文書は、消費者基本法(昭和43年法律第78号)第10条の2の規定に基づき、政府が講じた消費者政策の実施の状況について報告するとともに、消費者安全法(平成21年法律第50号)第12条各項の規定に基づき各行政機関の長、都道府県知事、市町村長及び国民生活センターの長から消費者庁に対し消費者事故等の発生に関する情報の通知があったもの等について、同法第13条第4項の規定に基づき集約及び分析を行い取りまとめた結果を報告するものである。

(出典:令和8年版 消費者白書「表紙裏表紙_大扉_目次_凡例_序」)

構成は2部です。第1部「消費者問題の動向と消費者の意識・行動」は、第1章「消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果等」(第1節〜第4節)と、第2章の特集「デジタル化とAI技術の進展で変化する、私たちの消費取引」(第1節・第2節・結び)からなります。第2部「消費者政策の実施の状況」は第1節〜第4節です(出典:令和8年版 消費者白書 概要 1ページ)。凡例によると、本文は原則として西暦で書かれ、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)の相談件数は原則として2026年3月31日までに登録された分で集計されています。

相談は97.0万件に増加、特集はサブスクリプション解約やSNS勧誘を分析

消費生活相談は2025年に97.0万件

全国の消費生活センター等に寄せられた消費生活相談の件数をみると、2025年は97.0万件であり、前年(90.7万件)より増加しました。近年は年間90万件前後で推移しており、2025年は2018年に次ぐ件数となりました(図表I-1-3-1)。

(出典:令和8年版 消費者白書 第1部第1章第3節 22ページ)

2016年から2025年までの消費生活相談件数の推移を示す棒グラフ。2018年が102.6万件、2024年が90.7万件、2025年が97.0万件
出典:消費者庁「令和8年版 消費者白書」第1部第1章 図表I-1-3-1(22ページ)

白書は、2025年の相談の契約当事者のうち65歳以上が33.0%で、年齢層別では70歳代の15.6%が最も多いと記載しています(23ページ)。1件当たりの平均契約購入金額は88.7万円、平均既支払額は50.1万円です(24ページ)。商品・サービス別の傾向は、概要で次のようにまとめられています。

○ 商品・サービス別では、迷惑メールや不審な電話を含む「商品一般」に関する相談が最も多い。次いで、「不動産貸借」に関する相談が多く、解約時に高額な違約金や修理代金を請求される事例等がみられる。

(出典:令和8年版 消費者白書 概要 5ページ)

高齢者の相談

○ 高齢者の消費生活相談件数は、2025年で32.0万件となり、前年より増加。近年、高齢者の相談割合は消費生活相談全体の3割程度で推移。

○ 認知症等の高齢者の相談は増加傾向にあり、本人からの相談は約4分の1にとどまる(高齢者全体でみると本人からの相談は約8割)。認知症等の高齢者本人はトラブルに遭っても気付きにくく、周囲の見守りが重要。

(出典:令和8年版 消費者白書 概要 6ページ)

本文では、認知症等の高齢者の相談は2025年に1万20件で、契約当事者本人からの相談の割合は高齢者全体で83.7%、認知症等の高齢者で25.8%と記載されています(第1部第1章第3節 32ページ)。点検を装って不要な契約を結ばせる「点検商法」の相談件数は、2025年が2万58件、2021年が7,395件です(27〜28ページ)。

通信販売の「定期購入」とSNSが関係する相談

○ 通信販売における「定期購入」に関する消費生活相談件数は、2025年で8万7,284件となり、依然として高止まりしている。

○ 商品・サービス別では、健康食品や化粧品に関する相談が上位にみられる。

(出典:令和8年版 消費者白書 概要 7ページ)

○ SNSが関係する消費生活相談件数は、2025年で10万1,045件となり、前年より増加。40歳代から60歳代が占める割合が高い。

○ 商品・サービス別では、化粧品や健康食品、内職・副業等に関する相談が上位にみられる。

(出典:令和8年版 消費者白書 概要 8ページ)

本文では、SNSが関係する相談件数は2021年(5万915件)の2.0倍になったと記載されています(第1部第1章第3節 35ページ)。

SNSが関係する消費生活相談件数を2021年から2025年まで年齢層別に積み上げた棒グラフ。2021年が5万915件、2024年が8万7,219件、2025年が10万1,045件
出典:消費者庁「令和8年版 消費者白書」第1部第1章 図表I-1-3-21(36ページ)

フィッシングとサポート詐欺

白書は「デジタル化に伴う詐欺的な手口に関する消費生活相談」の項目で、2つの手口を脚注で次のように説明しています。

通販サイト、クレジットカード会社、宅配便事業者等の実在する組織をかたるメールやSMSを送信し、パスワードやID、暗証番号、クレジットカード番号等の情報を詐取する手口。

(出典:令和8年版 消費者白書 第1部第1章第3節 37ページ 脚注27「フィッシング」)

パソコンやスマートフォンでインターネットを使用中に突然「ウイルスに感染している」等の偽警告画面や偽警告音が出て、それらをきっかけに電話を掛けさせ、有償サポートやセキュリティソフト等の契約を迫る手口。

(出典:令和8年版 消費者白書 第1部第1章第3節 38ページ 脚注28「サポート詐欺」)

件数について白書は、「フィッシング」に関する相談が2025年は8,914件で前年(1万2,675件)より減少したこと、「サポート詐欺」に関する相談は2023年(7,480件)をピークに2025年は3,758件まで減少した一方、契約購入金額の全年齢層での平均値は2025年に52.9万円で前年(27.9万円)から大幅に増加したことを記載しています(37〜38ページ)。

消費者被害・トラブル額の推計

○ 2025年の消費者被害・トラブルの経験率は、20.1%で前年より減少。

○ 2025年の1件当たりの消費者被害・トラブル額の平均金額(1億円以上の案件を除く)は、約52.9万円で前年より増加。

○ 2025年の消費者被害・トラブル推計額(既支払額(信用供与を含む。))は、約7.6兆円で前年より減少。

(出典:令和8年版 消費者白書 概要 9ページ)

本文の推計結果の表(図表I-1-4-3)の数字は次のとおりです。

2021年 2022年 2023年 2024年 2025年
既支払額(信用供与を含む。) 約5.6兆円 約6.0兆円 約7.9兆円 約9.0兆円 約7.6兆円
契約購入金額 約6.9兆円 約7.5兆円 約9.4兆円 約10.9兆円 約9.0兆円

(出典:令和8年版 消費者白書 第1部第1章第4節 44ページ)

表の備考には、次の注記があります。

本推計値は、一定の前提に基づき機械的な計算により算出したものであることに留意。

(出典:令和8年版 消費者白書 第1部第1章第4節 44ページ 図表I-1-4-3 備考5)

特集:デジタル化とAI技術の進展で変化する、私たちの消費取引

○ デジタル化やAI技術の進展等に伴い、消費取引の在り方は大きく変化している。こうした変化は、消費者に利便性をもたらす一方で、商品やサービスの適切な選択を難しくするなど、消費者の自律的な意思決定を困難にし、消費者の脆弱性を顕在化させるおそれがある。

(出典:令和8年版 消費者白書 概要 11ページ)

特集は「消費者意識基本調査」(2025年度)の結果をもとに、(1)事業者の販売手法の多様化、(2)情報の個別化と消費者のAI活用、(3)消費者の取引市場への関わり方の変化、の三つの観点から分析しています(第1部第2章 結び 106ページ)。凡例によると、この調査は全国の満15歳以上の日本国籍を有する者10,000人を対象に2025年11月10日〜26日に行われ、有効回収数は5,473人(54.7%)です。

特集:サブスクリプションの解約とSNSのチャットでの勧誘

○ インターネットでのサブスクリプション契約経験者のうち、解約トラブルに遭った人は約2割。

○ 解約手続ページが見つからなかった、解約手続が複雑だった等といったトラブルが4割以上。

(出典:令和8年版 消費者白書 概要 19ページ)

本文では、過去1年間にインターネットで商品・サービスを購入・申込みした人のうち71.6%にサブスクリプション契約の経験があり、そのうち解約に関するトラブルに遭ったことがある人は17.9%と記載されています(第1部第2章第2節 72ページ)。トラブルの内容は、「解約手続ページが見つからなかった/ウェブサイトの深い階層にあった」が46.0%、「手続が複雑だった/必要以上に多かった(入力や確認事項が多段階にわたるなど)」が45.7%です(73ページ)。

サブスクリプション契約の解約トラブルの内容別の割合を示す横棒グラフ。解約手続ページが見つからなかった46.0%、手続が複雑だった45.7%が上位
出典:消費者庁「令和8年版 消費者白書」第1部第2章 図表I-2-2-4(73ページ)

○ 過去1年間にSNSのチャットで勧誘を受けたことがある人は約2割。

○ そのうち、不意打ち的な勧誘を受けたと感じた人は約7割、執ような勧誘を受けたと感じた人は約4割、事実と異なる説明や威圧的な言い方があった、勧誘目的が不明瞭と感じた人は2割以上。

(出典:令和8年版 消費者白書 概要 21ページ)

本文では、勧誘を受けたことがある人は全体で18.4%、年齢層別では20歳代の29.1%が最も多いと記載されています(78ページ)。結びには、勧誘を通じて商品を購入した人の約6割が、購入後に不要なものだったと感じたことがあると書かれています(106ページ)。

特集の結び:従来の消費者法制度で対応しきれない問題が生じる可能性

特集の結びは、分析結果を次のようにまとめています。

以上の分析結果から、デジタル化やAI技術の進展は消費者に利便性をもたらす一方で、消費者の脆弱性が顕在化しやすくなる側面もあり、新たな消費者トラブルを生み出すリスクを伴っていることが明らかになりました。今後も新たな取引形態やサービスが次々と生まれることが想定される中、従来の消費者法制度では十分に対応しきれない問題が生じる可能性があります。

(出典:令和8年版 消費者白書 第1部第2章 結び 107ページ)

第2部は2025年度の施策実績、定期購入商法に行政処分7件

○ 消費者基本法の規定に基づき、政府における2025年度の消費者政策の実施状況を取りまとめている。

○ 具体的には、第5期消費者基本計画に沿って、消費者行政の各分野における取組実績(制度改正、法に基づく執行、消費者への周知啓発等の実績)を記載している。

(出典:令和8年版 消費者白書 概要 27ページ)

たとえば「詐欺的な定期購入商法」への対応として、特定商取引法の最終確認画面に係る誤認表示等の禁止規定に基づき、2025年度に7件の行政処分と3件の行政指導を行ったと記載されています(第2部 113ページ)。

令和7年版との比較:2024年は約90.0万件、2025年は97.0万件

令和7年版消費者白書の概要と、令和8年版の概要・本文を比べました。

特集テーマは、令和7年版が「グリーン志向の消費行動~消費から変えていく、私たちの生活と地球環境~」、令和8年版が「デジタル化とAI技術の進展で変化する、私たちの消費取引」です。第2部は、令和7年版が「第1章 第5期消費者基本計画の策定」「第2章 消費者政策の実施の状況の詳細」の2章、令和8年版が「消費者政策の実施の状況」の第1節〜第4節です(出典:消費者庁「消費者白書等」のページ、各版の概要)。

項目(概要の記載) 令和7年版(2024年) 令和8年版(2025年)
消費生活相談件数 約90.0万件(前年より減少) 97.0万件(前年より増加)
高齢者の消費生活相談件数 29.8万件 32.0万件
通信販売の「定期購入」に関する相談件数 8万9,893件 8万7,284件
SNSが関係する相談件数 8万6,396件 10万1,045件
消費者被害・トラブル推計額(既支払額(信用供与を含む。)) 約9.0兆円(前年より増加) 約7.6兆円(前年より減少)

(出典:令和7年版 消費者白書 概要 4〜8ページ、令和8年版 消費者白書 概要 5〜9ページ)

2024年の消費生活相談件数は約90.0万件で、前年より減少。近年は年間90万件前後で推移。

(出典:令和7年版 消費者白書 概要 4ページ)

同じ2024年の件数を、令和8年版の本文は90.7万件と記載しています(22ページ)。SNSが関係する2024年の相談件数も、令和8年版の本文では8万7,219件です(35ページ)。令和7年版の概要には、件数の時点について次の注記があります。

本資料において、PIO-NETに登録された消費生活相談情報の内容及び件数は2025年3月31日時点のもの。PIO-NETは消費生活センター等での相談受付から登録まで一定の時間を要するため、最終的な相談件数は若干増加する可能性がある。

(出典:令和7年版 消費者白書 概要 1ページ)

2024年の消費者被害・トラブル推計額(既支払額(信用供与を含む。))は、令和8年版の図表I-1-4-3でも約9.0兆円です。同じ図表の備考には、「令和7年版消費者白書」から、1億円未満の案件を対象として推計していると書かれています(44ページ)。

消費者契約法検討会とデジタル取引・特定商取引法等検討会で検討中

特集の結びには、消費者庁が2025年11月に「現代社会における消費者取引の在り方を踏まえた消費者契約法検討会」を、2026年1月に「デジタル取引・特定商取引法等検討会」を立ち上げ、消費者契約を始めとする消費者取引全般や、デジタル取引及び特定商取引等の消費者法制度の在り方について検討を進めていると記載されています(第1部第2章 結び 107ページ)。第2部にも、デジタル取引の特性に起因する消費者トラブル等に対する必要な措置について「デジタル取引・特定商取引法等検討会」で議論していると書かれています(第2部 113ページ)。

第2部には、内閣総理大臣からの諮問(2023年11月)を受けて、消費者委員会の「消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会」で調査・審議が行われ、2025年7月に同委員会から答申が出されたとの記載もあります(第2部 134ページ)。

経過

日付と出来事の一覧を開く(2件)
  1. 特集の元になった「消費者意識基本調査」(2025年度)を実施(11月26日まで)
  2. 定例閣議で白書の報告2件が国会提出案件(決定)となり、消費者庁が白書を公表

出典