厚生労働省中央社会保険医療協議会 薬価専門部会

令和9年度の薬価改定は、中医協でどう議論され、いつ決まるのか

この記事のまとめ

  • 令和9年度の薬価改定について、対象品目の範囲と適用するルールが中医協の薬価専門部会で議論されています。
  • 2026年7月8日に事務局が論点を示し、8月26日に業界の意見を聴いた段階で、範囲とルールの事務局案はまだありません。
  • 委員からは乖離の大きな品目に限るべきとの意見と、対象品目やルールを限定せず実施すべきとの意見が出ました。
  • 業界からは、日本製薬団体連合会が薬価の引き上げを、日本医薬品卸売業連合会が中間年の薬価改定の廃止を求めました。
  • 決定日程を示した資料は確認できず、これまでの3回は前年12月に3大臣の合意と中医協の骨子の了解が行われています。
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厚生労働省
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中央社会保険医療協議会 薬価専門部会
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議論中

2年に1回の改定の間の年にも行う「診療報酬改定がない年の薬価改定」

薬の公定価格(薬価)は、医療機関・薬局と卸の実際の取引価格を調べる薬価調査の結果にもとづいて改定されます。診療報酬と同時の改定は2年に1回で、その間の年にも令和3年度(2021年度)から薬価改定が行われてきました。厚生労働省の資料では、この改定を「診療報酬改定がない年の薬価改定」と呼んでいます(中医協の議事録では、委員の発言で「中間年改定」という呼び方も使われています)。

薬価の改定率が予算編成で示されるしくみや、令和8年度改定の薬価の改定率は「診療報酬はどうやって決まるのか」で整理しています。

2016年12月の基本方針から2026年8月の業界の意見聴取まで

  1. 2016年12月20日:4大臣の基本方針「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」で、2年に1回の薬価調査の間の年にも薬価改定を行うとされました。
  2. 2020〜2024年の各12月:令和3・5・7年度改定の決定いずれも12月に3大臣が合意し、数日後に中医協が改定の骨子を了解。翌年3月に告示、4月1日に実施されています。
  3. 2025年12月24日・26日:令和9年度改定の実施が示される大臣折衝事項で「着実に実施する」とされ、中医協が了解した令和8年度薬価制度改革の骨子にも同じ内容が入りました。
  4. 2026年7月8日:薬価専門部会で議論開始(第247回)事務局が論点を示し、部会は令和8年度の薬価調査の方法を了承。同日の第652回総会で承認されました。
  5. 2026年7月21日:骨太の方針2026「2027年度薬価改定を実施する」と書かれました。
  6. 2026年8月26日:業界からの意見聴取(第248回)製薬団体と卸の団体が意見を述べました。議事録は9月13日時点で未掲載です。

出発点:平成28年12月の基本方針で、間の年にも改定を行うとされた

2026年7月8日の事務局資料(薬-3)は、この改定の経緯として、内閣官房長官、経済財政政策担当大臣、財務大臣、厚生労働大臣が決定した基本方針を挙げています。

(2)市場実勢価格を適時に薬価に反映して国民負担を抑制するため、全品を対象に、毎年薬価調査を行い、その結果に基づき薬価改定を行う。

そのため、現在2年に1回行われている薬価調査に加え、その間の年においても、大手事業者等を対象に調査を行い、価格乖離の大きな品目(注)について薬価改定を行う。

(注)具体的内容について、来年中に結論を得る。

(出典:「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」平成28年12月20日 1ページ)

この「(注)」を受けて中医協が了承した骨子の内容は、2026年7月8日の事務局資料に次のように引用されています。

市場実勢価格を適時に薬価に反映して国民負担を抑制するため、2年に1度の薬価改定の間の年度(薬価改定年度)において、全ての医薬品卸から、大手事業者を含め調査対象を抽出し、全品目の薬価調査を実施することとし、その結果に基づき、薬価を改定する。

(出典:第247回薬価専門部会 薬-3 1ページ。「薬価制度の抜本改革について 骨子(平成29年12月20日 中医協了承)抄」)

これまでの3回(令和3・5・7年度):12月に合意と骨子の了解、4月1日に実施

改定 3大臣の合意 中医協が骨子を了解 改定の対象範囲 官報告示 実施
令和3年度 2020年12月17日 12月18日 平均乖離率8.0%の0.625倍(乖離率5.0%)を超える品目 2021年3月5日 2021年4月1日
令和5年度 2022年12月16日 12月21日 平均乖離率7.0%の0.625倍(乖離率4.375%)を超える品目 2023年3月3日 2023年4月1日
令和7年度 2024年12月20日 12月25日 平均乖離率5.2%を基準に、品目の区分ごとに0.5倍〜1.0倍を超える品目 2025年3月7日 2025年4月1日

(出典:第247回薬価専門部会 薬-2 5・14・15ページ、令和7年度薬価改定の骨子(案)、各年度の「薬価基準改定の概要」。令和7年度は、令和6年12月25日付の大臣折衝事項もあります)

令和7年度の区分ごとの基準は、新薬創出等加算の対象品目と後発品・その他が1.0倍(乖離率5.2%)、それ以外の新薬が0.75倍(3.9%)、長期収載品が0.5倍(2.6%)です。令和7年度の3大臣合意には、それまでの2回との違いが書かれています。

平均乖離率が縮小するなど、「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」(平成 28 年 12 月 20 日内閣官房長官、経済財政政策担当大臣、財務大臣、厚生労働大臣決定)当時から状況が大きく変化していることや、現役世代等の保険料負担が上昇していることを踏まえ、令和3年度、令和5年度の薬価改定の慣例に固執することなく、必要な対応を行う。

(出典:「令和7年度薬価改定について」令和6年12月20日 内閣官房長官、財務大臣、厚生労働大臣合意。令和7年度薬価改定の骨子(案)1ページに掲載)

平均乖離率について、2026年7月8日の部会で事務局は次のように説明しています。

年々平均乖離率は低下している状況であり、直近の令和7年度の値は4.8%でございました。

(清原薬剤管理官。出典:薬価専門部会 第247回議事録)

改定の範囲とは別に、どの算定ルールを適用するかも毎回決められてきました。事務局は3回の適用状況を1枚の表にしています。

診療報酬改定がない年の薬価改定で適用した算定ルールの表。実勢価改定と連動するルール(最低薬価の維持、基礎的医薬品の薬価維持、革新的新薬薬価維持制度、後発品の価格帯集約)は令和3・5・7年度とも適用。連動しないルールのうち、追加承認品目等の加算は令和7年度に臨時、不採算品再算定は令和5・7年度に臨時・特例、外国平均価格調整は令和5・7年度に適用、市場拡大再算定・効能変化再算定・用法用量変化再算定・長期収載品の薬価改定は3回とも適用なし
出典:厚生労働省「令和9年度薬価改定について」(第247回中医協薬価専門部会 薬-2、2026年7月8日)6ページ

令和9年度改定は大臣折衝事項と骨太の方針2026で「実施」とされた

令和8年度改定の大臣折衝事項(2025年12月24日)は、薬価制度関連事項の中で令和9年度の薬価改定に触れています。

さらに、上記3.①を踏まえ、令和9年度の薬価改定を着実に実施する。その際の対象品目の範囲や適用される各種ルールの在り方については、創薬イノベーションの推進、医薬品の安定供給の確保、現役世代の保険料負担を含む国民負担の軽減といった要請についてバランス良く対応するとの基本的な考え方を踏まえて検討する。

(出典:診療報酬改定について(令和7年12月24日大臣折衝事項)5ページ「4.薬価制度関連事項 ① 令和8年度薬価制度改革及び令和9年度の薬価改定の実施」)

「上記3.①」の内容は、2026年7月8日の部会で事務局が次のように説明しています。

3.①では、診療報酬改定について、今後の経済・物価動向が大きく変動し、医療機関等の経営状況に支障が生じた場合には、令和9年度の予算編成において、加減算を含む必要な調整を行うこととされております。

(清原薬剤管理官。出典:薬価専門部会 第247回議事録)

同じ大臣折衝事項は、費用対効果評価制度の更なる見直しについて「令和9年度の薬価改定の中で一定の結論を出す」としています(5ページ「②」)。

2025年12月26日に中医協が了解した令和8年度薬価制度改革の骨子には、「4.診療報酬改定がない年の薬価改定」の項があります。

「大臣折衝事項」(令和7年 12 月 24 日厚生労働省)に基づき、令和9年度薬価改定を着実に実施することとする。

(出典:令和8年度薬価制度改革の骨子(抄)。第247回薬価専門部会 薬-2 3ページに掲載)

骨太の方針2026(2026年7月21日閣議決定)には、次の記載があります。

経済・物価動向等の影響を受ける市場実勢価格を薬価調査等により的確に把握した上で、創薬イノベーション、医薬品の安定供給と国民負担の軽減の観点から、2027年度薬価改定を実施する。その際、費用対効果評価制度について、客観的な検証を進め、これも踏まえ、制度の発展に向けた更なる見直しについて具体的に検討し、一定の結論を出す。

(出典:経済財政運営と改革の基本方針2026 30ページ)

同じ段落では「特許期間中の薬価の在り方」を含む革新的新薬の評価の検討も書かれ、その脚注は「市場拡大再算定及び持続可能性特例価格調整等」としています。

2025年秋の部会:続けるかを検討すべきとの意見と、全ルール適用の意見

2025年12月3日の第242回薬価専門部会の資料(薬-2参考。2026年7月8日の薬-2 16ページに再掲)には、11月19日までの部会での主な意見がまとめられています。発言者は書かれていません。

4大臣合意当時と大きく環境が変化している。令和9年度まで期間があり、インフレ等の状況や平均乖離率の変化、関係者の中間年改定の影響を踏まえて、そもそも中間年改定をこのまま続けるのか等を検討した上で論点にあるような検討をすべき。

4大臣合意の趣旨も十分に踏まえ、基本的には全てのルールを適用し、毎年粛々と薬価改定を実施することが望ましい。

(出典:第247回薬価専門部会 薬-2 16ページ「これまでの主な意見」)

2026年7月8日:第247回薬価専門部会で示された論点

事務局資料「令和9年度薬価改定について」の論点は2つです。

上記の経緯等を踏まえ、令和9年度薬価改定について、実施を前提に、改定の対象品目の範囲や適用される各種ルールの在り方についてどう考えるか。

今後の検討にあたっては、これまでの薬価改定の影響も含め、関係業界からの意見聴取も行いつつ、議論を深めることとしてはどうか。

(出典:第247回薬価専門部会 薬-2 10ページ)

今回、この方針で御了解いただけましたら、次回の本部会では、関係業界からの意見聴取を行いたいと考えております。

(清原薬剤管理官。出典:薬価専門部会 第247回議事録)

乖離の大きな品目に限る意見と、限定せず実施する意見

価格乖離の大きな品目の価格調整を基本とする意見や、実勢価改定と連動しないルールを対象にすべきでないとする意見がありました。

診療報酬改定のない年の薬価改定となる中間年改定は、2年に1回の通常改定とは異なる位置づけであり、薬価改定を行うとしても、平成28年の4大臣合意に基づき、価格乖離の大きな品目について価格調整するということが基本的な役割と認識しております。

薬価改定の対象品目は、先ほど述べました、医療機関、薬局の状況に加え、具体的な品目ごとの供給状況を勘案するべきかどうか検討が必要であると考えております。

(江澤委員)

改定の対象品目の範囲についても、もともと4大臣合意の基本方針にあるとおり、あくまで乖離の大きな品目のみを対象として、基本的には実勢価改定と連動しないルールは中間年改定では対象にすべきでないと考えています。

(渡邊委員)

一方で、対象品目を広げ、ルールを限定しないよう求める意見もありました。

したがいまして、改定の対象品目を広くすることや、ページ6にございます適用されるルールにつきましては、全て議論の俎上にのせまして、メリハリのある対応をする必要性があると考えております。

(佐竹委員)

その上で、対象品目や算定ルールにつきましては、基本的には限定せずに実施すべきと考えております。

実勢価改定と連動しないルールも実施していくべきであり、少なくとも令和7年度に適用したルールを今回も適用することは、最低限行われるものと考えております。

(鳥潟委員)

改定の在り方そのものについて、引き続き検討が必要とする発言もありました。

中間年改定につきましては、大臣折衝で確認されていることでございますが、連合としては、これまでも申し上げておきましたとおり、中間年改定の在り方については引き続き検討が必要と考えます。

(永井委員)

(出典:いずれも薬価専門部会 第247回議事録)

論点の2つ目(業界からの意見聴取)には、発言した委員から異論は出ていません。菅原部会長は次のように締めくくりました。

次回の薬価専門部会において、関係業界からのヒアリングを行うとともに、今後、事務局において本日いただいた御意見を踏まえ、御対応いただくよう、よろしくお願いいたします。

(出典:薬価専門部会 第247回議事録)

令和8年度の薬価調査は令和2・4・6年度と同じ方法で承認

同じ回で、令和9年度改定の基礎になる令和8年度の薬価調査の方法が諮られました。

本年度の薬価調査は、別紙のとおり、令和2年度、令和4年度及び令和6年度の薬価調査と同様の方法により実施することとしてはどうか。

(出典:第247回薬価専門部会 薬-3 2ページ)

資料の「令和8年度薬価調査の概要(案)」によると、調査期間は令和8年度中の1か月間の取引分です(対象月は書かれていません。令和6年度は9月分)。販売サイドは卸の営業所等から3分の2を抽出(約4,300客体)、購入サイドは病院40分の1(約200客体)、診療所400分の1(約300客体)、保険薬局120分の1(約500客体)で、厚生労働省が直接調査票を配布・回収します。診療報酬改定に向けた令和7年度調査は、販売サイドが全数(6,450客体)、病院20分の1・診療所200分の1・保険薬局60分の1でした。

部会はこの方法を了承し、同日の第652回総会で菅原部会長が報告しました。総会の議事録では、城山会長が中医協として承認することを諮り、「異議なしの意思表示あり」と記録されています。

2026年8月26日:関係業界からの意見聴取(第248回)

第248回では、日本製薬団体連合会、日本ジェネリック製薬協会、日本製薬工業協会、米国研究製薬工業協会、欧州製薬団体連合会、日本医薬品卸売業連合会が意見を述べました。議事録は9月13日時点で掲載されていないため、ここでは各団体の提出資料の記載を引用します(資料は第248回の資料ページにあります)。

改善方向にあったドラッグ・ラグ/ロスや医薬品の安定供給体制を後退させないためにも、現下の情勢に鑑みれば、薬価改定により薬価を引き上げるべきである。

(日本製薬団体連合会 提出資料 薬-1 6ページ)

特許期間中の製品に対する薬価引下げは行わない

市場実勢価と連動しない薬価引下げルールは実施しない

(日本製薬工業協会・米国研究製薬工業協会・欧州製薬団体連合会 提出資料 薬-2 13ページ「2027年度薬価改定」)

物価高騰をはじめとする環境変化を適切に反映し、持続的な安定供給を可能とする薬価上の手当て

(日本ジェネリック製薬協会 提出資料 薬-3 2ページ)

1 中間年の薬価改定を廃止していただきたい。

2016年の4大臣合意に立ち返り、改定対象を”価格乖離の大きな品目”に限定していただきたい。

(日本医薬品卸売業連合会 提出資料 薬-4 6ページ。後者は「2027年度の薬価改定を実施するのであれば」として挙げられた項目)

対象品目の範囲とルールは未定、業界の意見を聴いた段階

2026年9月13日時点で、資料から確認できる到達点は次のとおりです。

  • 実施すること: 大臣折衝事項と中医協の令和8年度薬価制度改革の骨子で「着実に実施する」、骨太の方針2026で「実施する」とされています。
  • 対象品目の範囲と適用するルール: 未定です。第247回で事務局が論点を示し、第248回で業界の意見を聴いた段階です。9月13日時点で掲載されている薬価専門部会の資料に、対象範囲やルールの事務局案はありません。
  • 薬価調査: 令和8年度の調査を令和2・4・6年度と同じ方法で行うことを、中医協が7月8日に承認しています。
  • 総会: 2026年の総会(第640回〜第656回)の議題に、令和9年度の薬価改定そのものを掲げた回はありません。7月8日の第652回で薬価調査が報告・承認されています。

過去3回は前年12月に合意と骨子の了解

令和9年度改定の決定日程や施行日を示した資料は、9月13日時点で確認できていません。大臣折衝事項は、診療報酬の追加の調整を「令和9年度予算編成」で行うとしています。

これまでの3回は、内閣官房長官・財務大臣・厚生労働大臣の合意が前年の12月16日〜20日、中医協による改定の骨子の了解がその1〜5日後でした。告示は3月3日〜7日、実施はいずれも4月1日です。

令和9年度改定の対象範囲とルールが決まったら、この記事に結果を追記します。

経過

日付と出来事の一覧を開く(9件)
  1. 「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」を4大臣が決定。2年に1回の薬価調査の間の年にも、価格乖離の大きな品目の薬価改定を行うとされる
  2. 中医協が令和3年度薬価改定の骨子を了解(前日に3大臣合意。2021年4月1日実施)
  3. 中医協が令和5年度薬価改定の骨子を了解(12月16日に3大臣合意。2023年4月1日実施)
  4. 中医協が令和7年度薬価改定の骨子を了解(12月20日に3大臣合意。2025年4月1日実施)
  5. 令和8年度改定の大臣折衝事項で「令和9年度の薬価改定を着実に実施する」とされる
  6. 中医協が令和8年度薬価制度改革の骨子を了解。「診療報酬改定がない年の薬価改定」の項に令和9年度改定の実施を記載
  7. 第247回薬価専門部会で事務局が令和9年度薬価改定の論点を提示。令和8年度薬価調査の方法を了承し、同日の第652回総会で承認
  8. 骨太の方針2026を閣議決定。「2027年度薬価改定を実施する」と記載
  9. 第248回薬価専門部会で関係業界(製薬団体・卸)からの意見聴取

出典

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