財務省・総務省税制改正

税制改正はどうやって決まるのか 8月末の要望から与党大綱・閣議決定・国会での成立まで

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税制改正

ポイント

  • 税制改正は、各府省庁の要望(8月末)→ 与党の税制改正大綱(12月)→ 政府の「税制改正の大綱」の閣議決定(12月下旬)→ 税制改正法案の国会提出(2月)→ 成立・公布(3月末)→ 施行(4月1日など) の順に進みます。令和8年度税制改正はこの順番と時期で進み、令和7年度も要望(8月30日時点)・閣議決定(12月27日)・法案提出(2月4日)・成立(3月31日)の時期はほぼ同じでした。
  • 8月末の要望は、各府省庁が「こうしてほしい」と出した段階です。税制改正として実現するかどうかは、年末の大綱と翌年の国会で決まります。
  • 内閣府に置かれた「税制調査会」(政府税制調査会)と、政党の中にある「税制調査会」(与党の税制調査会)は別の組織です。

決まるまでの流れ

  1. 各府省庁が税制改正要望を出す(8月末)国税の要望は財務省の、地方税の要望は総務省のページに、府省庁ごとに掲載されます。令和9年度分は令和8年(2026年)8月31日付、令和8年度分は令和7年8月29日時点、令和7年度分は令和6年8月30日時点の要望です。根拠の資料: 財務省「令和9年度税制改正要望」、総務省「令和9年度 税制改正要望」、財務省「税制改正の概要」。
  2. 与党の税制調査会で議論し、与党の「税制改正大綱」を決定(12月)令和8年度分は、令和7年12月19日付で自由民主党・日本維新の会の「令和8年度税制改正大綱」がまとめられました。根拠の資料: 与党大綱(自由民主党サイト掲載のPDF)。
  3. 政府が「税制改正の大綱」を閣議決定(12月下旬)令和8年度分は令和7年12月26日、令和7年度分は令和6年12月27日に閣議決定されています。根拠の資料: 財務省掲載の「令和8年度税制改正の大綱」、総務省「毎年度の地方税制改正」。
  4. 内閣が税制改正法案を国会に提出(2月)国税は「所得税法等の一部を改正する法律案」、地方税は「地方税法等の一部を改正する法律案」などの名前で提出されます。令和8年は2月20日、令和7年は2月4日に提出されました。根拠の資料: 参議院・衆議院の議案情報、財務省「第221回国会における財務省関連法律」。
  5. 国会で可決・成立し、公布(3月末)令和8年は、衆議院で3月13日に可決、参議院で3月31日に可決され、同日公布されました(所得税法等は令和8年法律第12号、地方税法等は令和8年法律第2号)。令和7年も3月31日に参議院で可決され、同日公布されています。根拠の資料: 参議院・衆議院の議案情報。
  6. 施行(4月1日など)。どの年分・年度分から適用されるかは項目ごとに違う財務省の法律案の概要では、所得税法等の改正の施行日は令和8年4月1日です。一方、大綱では、項目ごとに「令和8年分以後の所得税について適用」「令和9年分以後の所得税について適用」のように適用の始まりが書き分けられています。根拠の資料: 財務省「所得税法等の一部を改正する法律案」について、総務省「地方税法等の一部を改正する法律の概要」、令和8年度税制改正の大綱。

1. 要望の段階(8月末)

財務省の「令和9年度税制改正要望」のページには、府省庁別の要望事項と、次の集計資料が掲載されています。

「令和9年度税制改正要望の状況について」(各府省庁から提出された要望(8月31日付)の単純集計)

(出典:財務省「令和9年度税制改正要望」)

総務省の「令和9年度 税制改正要望」のページにも府省庁別の一覧があり、次の注記が付いています。

※令和8年8月31日時点での税制改正要望となります。

(出典:総務省「令和9年度 税制改正要望」)

集計資料によると、令和9年度分の要望項目数は、国税で合計208(重複を除くと124)、地方税で合計231(重複を除くと159)です。

(各府省庁から提出された要望(地方税)(8月31日付)の単純集計)

(出典:総務省「令和9年度税制改正要望の状況について」)

要望には、新しい制度の創設だけでなく、期限が来る特例の延長や、制度の見直しに伴う「税制上の所要の措置」も含まれます。各府省庁の要望の中身は、このサイトの速報(下の関連記事)でまとめています。

与党の令和8年度税制改正大綱は、要望を出す府省庁に対して、次のように書いています。

所管省庁においては、令和8年度税制改正の結果も踏まえつつ、令和9年度税制改正に向けて、租税特別措置等の要望段階から、データに基づいた説明責任を果たすことが求められる。

(出典:自由民主党・日本維新の会「令和8年度税制改正大綱」10ページ)

2. 与党の税制改正大綱(12月)

令和8年度分の与党大綱は、表紙に「令和7年12月19日」「自由民主党」「日本維新の会」とあり、「第一 令和8年度税制改正の基本的考え方」「第二 令和8年度税制改正の具体的内容」「第三 検討事項」で構成されています。大綱は、与党の税制調査会について次のように書いています。

自由民主党の税制調査会は新たな体制となり、日本維新の会でも、新たに税制調査会を立ち上げた。

(出典:自由民主党・日本維新の会「令和8年度税制改正大綱」1ページ)

「第三 検討事項」には、今後「総合的に検討する」「引き続き検討する」などとされた項目(年金課税、小規模企業等に係る税制のあり方など)が並んでいます。

3. 政府の「税制改正の大綱」(閣議決定)

与党大綱の1週間後、令和7年12月26日に、政府の「令和8年度税制改正の大綱」が閣議決定されました。大綱は冒頭で改正の全体像を示したうえで、次の文で具体的な改正内容に入ります。

具体的には、次のとおり税制改正を行うものとする。

(出典:令和8年度税制改正の大綱(令和7年12月26日閣議決定)1ページ)

財務省の広報誌「ファイナンス」令和8年4月号の記事「令和8年度 税制改正(国税)等について」も、令和7年12月19日に与党が大綱を決定し、12月26日に政府大綱が閣議決定され、令和8年3月31日に所得税法等の一部を改正する法律案が成立した、という順序で説明しています。

4. 法案の提出と成立(2月〜3月末)

閣議決定された大綱の内容は、法律の改正が必要なものについて、法案として国会に出されます。令和8年の第221回国会(特別会)での経過は次のとおりです。

法案 国会に提出 衆議院で可決 参議院で可決 公布・法律番号
所得税法等の一部を改正する法律案(閣法第3号) 令和8年2月20日 3月13日(財務金融委員会・本会議) 3月31日(財政金融委員会・本会議) 3月31日公布、令和8年法律第12号
地方税法等の一部を改正する法律案(閣法第4号) 令和8年2月20日 3月13日(総務委員会・本会議) 3月31日(総務委員会・本会議) 3月31日公布、令和8年法律第2号

(出典:参議院 議案情報、衆議院 議案審議経過情報)

前年の令和7年(第217回国会)は、所得税法等の一部を改正する法律案と地方税法及び地方税法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案が2月4日に提出され、3月31日に参議院で可決、同日公布されています(令和7年法律第13号、第7号)。所得税法等の改正案は、衆議院で修正されたうえで可決されています。

5. 施行と「いつの分から使えるか」

財務省の「所得税法等の一部を改正する法律案」の概要では、施行日は令和8年4月1日とされています。総務省の地方税法等の改正の概要も、主な税負担軽減措置を「原則:令和8年4月1日施行」としています。

ただし、個々の改正がいつの所得や年度から使えるかは、項目ごとに決められています。令和8年度の大綱では、たとえば基礎控除の引上げについて次のように書かれています。

① 基礎控除について、合計所得金額が 2,350 万円以下である個人の控除額を4万円引き上げる。

(注1)上記の改正は、令和8年分以後の所得税について適用する。なお、給与等及び公的年金等の源泉徴収については、令和9年1月1日以後に支払うべき給与等又は公的年金等について適用する。

(出典:令和8年度税制改正の大綱(令和7年12月26日閣議決定)2ページ)

一方、同じ大綱のひとり親控除の引上げは、所得税では令和9年分以後、個人住民税では令和10年度分以後の適用とされています。

① ひとり親控除について、控除額を 38 万円(現行:35 万円)に引き上げる。

(出典:令和8年度税制改正の大綱(令和7年12月26日閣議決定)4ページ)

政府税制調査会と与党の税制調査会の違い

「税制調査会」という名前の組織は、政府と政党の両方にあります。

政府の税制調査会は、内閣府本府組織令で内閣府に置かれている審議会です。

税制調査会は、次に掲げる事務をつかさどる。 一 内閣総理大臣の諮問に応じて租税制度に関する基本的事項を調査審議すること。 二 前号の諮問に関連する事項に関し、内閣総理大臣に意見を述べること。

(出典:内閣府本府組織令 第33条第1項、e-Gov法令検索)

委員の選び方は、税制調査会令で決められています。

委員及び特別委員は、学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命する。

(出典:税制調査会令 第2条第1項、内閣府「税制調査会に関する政令の規定」)

内閣府の税制調査会のページには、第6回税制調査会(2025年11月18日)の会議資料や、専門家会合の資料が掲載されています。

政府の税制調査会 与党の税制調査会
どこにあるか 内閣府(内閣府本府組織令 第31条) 各政党の中(令和8年度与党大綱に「自由民主党の税制調査会」「日本維新の会でも、新たに税制調査会を立ち上げた」との記載)
何をするか(資料の記載) 内閣総理大臣の諮問に応じて租税制度に関する基本的事項を調査審議(同令 第33条) 令和8年度分は、自由民主党・日本維新の会として「税制改正大綱」を令和7年12月19日にまとめた
委員 学識経験のある者から内閣総理大臣が任命(税制調査会令 第2条)

政府の「税制改正の大綱」を決めるのは閣議(内閣)で、大綱の表紙にも「閣議決定」と書かれています。

要望が大綱に入らなかった例(ベビーシッター等の利用料)

8月末に出た要望が、その年の大綱に改正事項として入らないこともあります。ベビーシッター等の利用料に関する要望がその例です。

こども家庭庁が令和9年度に出した要望の資料には、「これまでの要望経緯」として次の記載があります。

平成 28 年度、29 年度、30 年度、31 年度、令和2年度において、厚生労働省と内閣府の共同要望により「子育て支援に要する費用に係る税制措置の創設」として、ベビーシッター・認可外保育施設の利用料に関する税額控除の創設を要望。また。令和8年度においてはこども家庭庁の単独要望として、「ベビーシッター等の利用に要する費用に係る税制上の措置」を要望。

(出典:令和9年度地方税制改正(税負担軽減措置等)要望事項 No.4(こども家庭庁)4-4ページ)

令和8年度の与党大綱は、この項目を「第一 令和8年度税制改正の基本的考え方」の中で取り上げ、次のように書いています。

まずは、政府において、関係省庁が一体となって、事業者・団体との連携の下、これらのサービスの普及広報や実態・ニーズの調査を行うとともに、来年夏を目途として、サービスの品質・信頼性の向上や人材の育成・確保に向けたリ・スキリング、利用拡大に向けた税制措置を含む支援策等について、総合的に検討を行い、必要な場合には、適用対象の範囲等に係る要件を適切に設定した上で税制上の措置を講ずることとする。

(出典:自由民主党・日本維新の会「令和8年度税制改正大綱」17ページ)

令和7年12月26日に閣議決定された「令和8年度税制改正の大綱」には、ベビーシッターに関する改正事項は書かれていません。こども家庭庁が令和7年12月にまとめた「令和8年度税制改正の概要」では、改正事項の一覧の欄外に次の注記があります。

※「ベビーシッター等の利用に要する費用に係る税制上の措置」について、「「強い経済」を実現する総合経済対策」(令和7年11月21日閣議決定)等を踏まえ、ベビーシッターの質の向上・人材育成・利用拡大に向けた税制措置を含む支援策について引き続き検討していく。

(出典:こども家庭庁「令和8年度税制改正の概要」2ページ)

そして令和9年度分では、こども家庭庁が項目名を広げて、改めて要望しています(厚生労働省の資料では、経済産業省・こども家庭庁との共同要望とされています)。

家事支援サービスやベビーシッター等の利用に要する費用に係る税制上の所要の措置

(出典:総務省「令和9年度 税制改正要望(こども家庭庁)」)

この要望が令和9年度の大綱でどう扱われるかは、まだ決まっていません。要望の中身はこども家庭庁の令和9年度税制改正要望(速報)にまとめています。

令和8年度税制改正の日付(まとめ)

段階 日付 資料
各府省庁の要望 令和7年(2025年)8月29日時点 財務省「令和8年度税制改正要望」、総務省「令和8年度 税制改正要望」
与党の税制改正大綱 令和7年12月19日 自由民主党・日本維新の会「令和8年度税制改正大綱」
税制改正の大綱の閣議決定 令和7年12月26日 「令和8年度税制改正の大綱」
法案の国会提出 令和8年(2026年)2月20日 参議院 議案情報
衆議院で可決 令和8年3月13日 衆議院 議案審議経過情報
参議院で可決・成立、公布 令和8年3月31日(法律第12号・第2号) 参議院 議案情報
施行 令和8年4月1日(地方税は主な税負担軽減措置が原則この日) 財務省・総務省の法律(案)の概要

令和9年度分はいまどの段階か

令和9年度分は、各府省庁が令和8年8月31日付で要望を出した段階です。令和8年度分では、要望の後、12月19日に与党大綱、12月26日に政府の大綱がまとまり、翌年2月20日に法案が提出され、3月31日に成立しています。令和7年度分も、政府の大綱の閣議決定は12月27日、法案の提出は2月4日、成立は3月31日でした。令和9年度分の大綱の時期は、今回の財務省・総務省の要望ページには書かれていません。

出典

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