内閣府令和8年度 経済財政白書(年次経済財政報告)

令和8年度 経済財政白書(内閣府) 物価と実質賃金の動き、金利・原油価格の上昇が家計に与える影響の分析

この記事のまとめ

  • 内閣府の令和8年度経済財政白書は7月24日に公表され、副題は「成長型経済への本格的移行に向けた課題」です。
  • 白書は、実質賃金の上昇率が2025年中はマイナス基調で、2026年に入って前年比プラスとなっていると記載しています。
  • 白書は、金利上昇による30代の住宅ローン保有世帯の年間負担増を平均24万円程度(可処分所得の4%程度)と試算しています。
  • 白書は原油価格上昇による1年間の家計負担を勤労者世帯平均で消費支出の1%程度(町村1.2%程度、大都市0.9%程度)と試算しています。
  • 白書は閣議に配布された大臣の報告で新しく何かを決めるものではなく、最低賃金の改定は最低賃金審議会で審議されます。
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令和8年度 経済財政白書(年次経済財政報告)

7月24日に公表、閣議には配布、前身から数えて80回目

副題は「成長型経済への本格的移行に向けた課題」で、PDF版の目次ページには「経済財政政策担当大臣報告」と記載されています。

日付は、公式ページで次のように示されています。

  • 公表日:内閣府の「白書等」のページに、令和8年度年次経済財政報告の日付として「令和8年7月24日」と記載されています(PDF版の目次ページの表記は「令和8年7月」)。
  • 閣議:首相官邸の「令和8年7月24日(金)定例閣議案件」では、「配布」の欄に「令和8年度年次経済財政報告(内閣府本府)」が載っています。閣議決定の案件ではなく、閣議の席上に資料として配布された案件です。

「公表に当たって」には、次の記載があります。

令和8年度年次経済財政報告は、終戦直後の昭和 22 年に発刊された前身の「経済実相報告書」から数えて、80 回目の報告書となります。

(出典:令和8年度 年次経済財政報告「令和8年度年次経済財政報告公表に当たって」)

本文は3章8節、第2章で家計への影響を分析

本文は3章8節です(ページは目次の表記)。

第1章 景気の現状と課題 第1節 原油価格上昇の影響と物価・賃金の動向(3ページ)/第2節 我が国の実体経済の動向(26ページ)
第2章 経済の構造変化と家計への影響 第1節 賃金・物価・金利が変動する経済が家計に与える影響(73ページ)/第2節 労働需要の変化と求職・求人市場(101ページ)/第3節 時間と労働供給(135ページ)
第3章 物価環境の変化と成長資本の蓄積 第1節 現れ始めた企業行動の変化(169ページ)/第2節 我が国企業のバランスシート ―資本ストックの更なる蓄積に向けて―(192ページ)/第3節 賃金と物価の緩やかな上昇と設備投資の拡大(228ページ)

(出典:令和8年度 年次経済財政報告「目次」)

このほか、はじめに、おわりに、付図、付注、参考文献、図表索引と、コラム15本があります。第2章について、「はじめに」は次のように説明しています。

第2章では、「経済の構造変化と家計への影響」として、賃金・物価・金利が上昇し、AIなどへの対応も必要となっていることを踏まえ、家計・雇用者側の課題を分析する。近年、家計の可処分所得に占める金融所得の割合が高くなっているが、その恩恵は住宅ローンの有無や年齢といった属性によって大きく異なることを定量的に示す。

(出典:令和8年度 年次経済財政報告「はじめに」1ページ)

実質賃金は2026年にプラス、金利・原油の上昇は家計の負担増と試算

ここでは、家計に関わる分析(物価、賃金、金利、最低賃金など)を中心に取り上げます。

消費者物価の上昇率と原油価格の上昇

白書は第1章第1節で、2026年2月末の中東情勢の緊迫化による原油価格の上昇を起点に、輸入物価・企業物価・消費者物価の動きを分析しています。消費者物価については次の記載です。

流通経路では最も川下に位置する消費者物価については、消費者物価(総合)の上昇率は2026 年に入ってから、1%台半ばと企業物価に比べても低く抑えられている(第1-1-5図(1)、(2))。

(出典:令和8年度 年次経済財政報告 第1章第1節 7ページ)

白書は、2026年に入ってからの上昇率の鈍化の要因として、米や食料品価格の上昇鈍化と電気・ガス料金の負担軽減策を挙げています。また、中東情勢の緊迫化後もガソリン小売価格が緊迫化前の水準をおおむね維持したことについて、ガソリン等燃料油の緊急的激変緩和措置によるものと記載しています。先行きについては、次のように記載しています。

もっとも、中東情勢の影響を受けて、石油・化学製品を中心に、輸入物価や企業物価が大きく上昇したことから、川下の消費者物価全体に対する物価上昇圧力は今後一定期間続く見込みである。

(出典:令和8年度 年次経済財政報告 第1章第1節 7ページ)

実質賃金は2026年に入って前年比プラス

こうした現金給与総額の伸びから消費者物価上昇率を差し引いた実質賃金の上昇率は、2025 年中はマイナス基調で推移してきたが、2026 年に入ってからは、賃上げの進展や、物価の伸びが一頃に比べると落ち着いてきたことを背景に、前年比プラスとなっている。2026 年度の春季労使交渉の状況を確認すると、定期昇給込みで前年比5%程度、ベースアップ分で3%台半ばと、昨年に引き続き高い伸びを維持している。

(出典:令和8年度 年次経済財政報告 第1章第1節 17ページ)

白書は同じ箇所で、毎月勤労統計の現金給与総額が2026年に入って前年比3%程度の伸びとなっていること、パートタイム労働者比率の上昇が賃金上昇率のプラス幅を部分的に縮小する要因になっていることも記載しています。

賃金と物価の関係(単位労働費用・サービス物価)

白書は、賃金上昇に由来する物価上昇圧力を示す指標として単位労働費用(ULC)を使い、次のように分析しています。

GDPデフレーターの上昇率を「ULC要因」とユニットプロフィットを含む「その他の要因」に要因分解すると、2022 年前後の物価上昇初期に比べ、2024 年以降はULC要因の寄与度が高まっていることがわかる(第1-1-9図(3))。賃上げの継続により、賃金上昇を伴う物価上昇の実現が徐々に近づいてきていると解釈できよう。

(出典:令和8年度 年次経済財政報告 第1章第1節 13ページ)

人件費の比率が高いサービスの価格については、次のとおりです。

賃金上昇の継続がサービス物価の安定的な上昇につながれば、賃金と物価が相互に参照しながら安定的に上昇していく望ましい姿に近づいていく。それをマクロ経済の視点でみれば、単位労働費用の安定的な上昇ということになる。サービス物価の近年の動向は、我が国経済がそうした望ましい姿に近づいてきたことを示唆しているといえる。

(出典:令和8年度 年次経済財政報告 第1章第1節 22ページ)

企業の側については、第3章第3節で、内閣府が独自に行った企業アンケート(「生産性向上に向けた取組に関する企業動向調査」)をもとに分析しています。

また、原材料コストや人件費を転嫁しやすくなったと感じる企業ほど、賃上げ幅が大きくなることもわかる(第3-3-11 図(2))。

(出典:令和8年度 年次経済財政報告 第3章第3節 252ページ)

デフレ脱却の現在地

白書は、2006年3月の内閣府の参議院予算委員会提出資料で例示された指標(消費者物価、GDPデフレーター、GDPギャップ、単位労働費用)に沿って確認しています。

これら内閣府提出資料で例示された四つの指標のうち、プラス基調の持続性が確認できていないのはGDPギャップの動向である。0近傍まで改善してきたが、特に、本年春以降の中東情勢の緊迫化が、交易条件の悪化を通じて企業収益や家計の実質所得といった実体経済をどの程度下押しするのか、GDPギャップのプラスは維持されるのか、慎重に見極めていく必要がある。

(出典:令和8年度 年次経済財政報告 第1章第1節 24ページ)

第1-1-14図には、消費者物価(総合)の前年同月比が2026年5月に1.5%、GDPギャップが2026年1-3月期に0.5%、単位労働費用の前年同期比が同じく3.1%と示されています。

消費者物価上昇率(総合・コア・コアコア)、GDPデフレーター上昇率、GDPギャップ、単位労働費用(ULC)上昇率の推移を4つのグラフで並べた図
出典:内閣府「令和8年度 年次経済財政報告」第1章第1節 第1-1-14図(25ページ)

金利の上昇と家計(住宅ローンのある現役世代)

白書は、住宅ローンなどの債務の金利が1%ポイント、預金などの金融資産の金利が0.6%ポイント上がると仮定し、金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査」(2024年、二人以上世帯)のデータで、利子の受け取りと支払いの変化を年代別に試算しています。

まず、20 代~40 代では金利上昇による純受取利子の増加幅はマイナス、すなわち、支払利子の増加が受取利子の増加を上回っていることがわかる(第2-1-10 図(1))。

(出典:令和8年度 年次経済財政報告 第2章第1節 87ページ)

例えば、純支払利子の増加幅の大きい 30 代の住宅ローン保有世帯では、年間の負担増は平均で 24 万円程度、金利上昇の前提次第で金額は変動するため可処分所得比でインパクトを測ると、本調査の可処分所得の平均(600 万円程度)の4%程度の金利負担増となる。

(出典:令和8年度 年次経済財政報告 第2章第1節 88ページ)

白書は、これらが一定の機械的な想定に基づく試算であることも記載しています(第2章第1節 91ページ)。

原油価格の上昇と家計負担(地方・低所得層)

白書は、消費支出に占めるエネルギーの割合が大都市部で5.1%(うちガソリン1.0%)、町村部で9.4%(同3.4%)と記載しています。そのうえで、原油価格が2026年2月から4月にかけて最大で50%程度上昇したことを踏まえ、VARモデルで計算した、原油価格が10%上昇した場合の反応を機械的に5倍して家計負担を試算しています。

原油価格上昇による1年間の家計負担への影響の試算結果をみると、勤労者世帯平均で消費支出全体の1%程度となっている。世帯類型別にみると、都市階級別では大都市で0.9%程度であるのに対し、町村では 1.2%程度、所得が最も低い層(第1分位)では 1.1%であるのに対し、最も高い層(第5分位)では 0.9%となるなど、最大で 0.2~0.3%ポイント程度の差が生じている(第2-1-16 図(2))。

(出典:令和8年度 年次経済財政報告 第2章第1節 96ページ)

物価・金利・賃金の上昇をまとめてみた試算

白書は、物価(食料品やエネルギー関連を5%、それ以外はおおむね2%前後)、金利(住宅ローン金利が1%程度、預金金利や債券利回りなどが0.5~0.8%程度)、賃金(2026年度の春闘の賃金上昇率、企業規模に応じて4~5%前後)の上昇を想定し、世帯の類型ごとに影響を試算しています。

住宅ローンを保有する世帯(上段)は、ローンにかかる金利が上昇することで負担が増加する上、金融資産の保有額が限定的である層(左上)は、資産側の金利上昇による相殺がなく、最も大きな純負担増となっている。

(出典:令和8年度 年次経済財政報告 第2章第1節 98ページ)

また、いずれの世帯でも、物価上昇(黄緑)は負担増、賃金上昇(緑)は負担軽減に寄与しているが、賃金の伸びが物価の伸びを上回る状況が続く想定の下では、当然のことながら、負担は純減することになる。ただ、賃金上昇による負担軽減の度合いを属性別にみると、現業職の世帯では相対的にやや小さく出るといった違いもみられ、賃上げの業種による濃淡によって物価上昇等の負担軽減度合いも変わってくることから、賃金上昇の広がりを進展させていくことが重要になる。

(出典:令和8年度 年次経済財政報告 第2章第1節 98ページ)

住宅ローンの有無と金融資産の多少で世帯を4つに分け、世帯の勤労構造別に、物価上昇・金利上昇・賃金上昇が可処分所得に与える影響と実質所得の変化を示した棒グラフ
出典:内閣府「令和8年度 年次経済財政報告」第2章第1節 第2-1-17図(99ページ)

賃金カーブと最低賃金

第2章第2節は、職種別の賃金カーブを比べています。白書は、20~24歳時点の所定内給与(月給)は「サービス職業従事者」22.6万円、「輸送・機械運転従事者」25.7万円、「生産工程従事者」22.3万円で、「事務従事者」(24.4万円)と大きな差はないと記載しています。

一方、昇給ペースは緩やかであり、「サービス職業従事者」や「輸送・機械運転従事者」は賃金カーブのピークとなる 40 代においても、20 代前半時の 1.2 倍程度となっている。

(出典:令和8年度 年次経済財政報告 第2章第2節 112ページ)

職種別の年齢階級ごとの所定内給与の金額と、20~24歳を100とした指数を示した2つの折れ線グラフ(賃金カーブ)
出典:内閣府「令和8年度 年次経済財政報告」第2章第2節 第2-2-9図(113ページ)

第2章第3節は、通勤圏を踏まえた労働市場を分析し、最低賃金について次のように記載しています。

また、パートタイム雇用者の通勤圏が相対的に狭い傾向にあることに鑑みれば、最低賃金制度の適切な運用が、特に求人の少ない地域におけるパートタイム労働者の待遇改善につながることを示しているともいえる。特に、労働市場の独占度の高い地域ほど、賃金が均衡水準を下回りやすいとすれば、そうした地方ほど最低賃金の引上げが有意に作用することも含意していると考えられる。

(出典:令和8年度 年次経済財政報告 第2章第3節 166ページ)

令和7年度版からの変化:財政の節がなくなり、実質賃金はプラスの記述に

令和7年度 年次経済財政報告(内閣府の「白書等」のページの日付は「令和7年7月29日」)と、副題・章立て(PDF版目次ページ)、「はじめに」、実質賃金の記述(令和7年度は第1章第2節、令和8年度は第1章第1節)を比べました。

令和7年度 令和8年度
副題 内外のリスクを乗り越え、賃上げを起点とした成長型経済の実現へ 成長型経済への本格的移行に向けた課題
第1章 日本経済の動向と課題(第3節 財政の現状と課題を含む) 景気の現状と課題
第2章 賃金上昇の持続性と個人消費の回復に向けて 経済の構造変化と家計への影響
第3章 変化するグローバル経済と我が国企業部門の課題 物価環境の変化と成長資本の蓄積

(出典:内閣府「令和7年度 年次経済財政報告 目次(PDF版)」「令和8年度 年次経済財政報告 目次(PDF版)」)

令和8年度の目次には、財政を扱う節はありません。「はじめに」では、令和7年度版が米国の関税措置を我が国経済を下押しする大きなリスクとして挙げていたのに対し、令和8年度版は2026年2月末の中東情勢の緊迫化と原油価格の上昇等の影響を取り上げています。

実質賃金の記述。 令和7年度版は、次のように記載していました。

月次の動きをみると、2024 年末には上昇率が一旦プラスに転じたものの、2024 年秋頃から食料品を中心に物価上昇率が高まっていった結果、2025 年に入って以降は、再びマイナスに転じることとなった(第1-2-25 図(1))。

(出典:令和7年度 年次経済財政報告 第1章第2節 105ページ)

令和8年度版は、前掲のとおり、実質賃金の上昇率が「2026 年に入ってからは」前年比プラスとなっていると記載しています(第1章第1節 17ページ)。

最低賃金は最低賃金審議会で審議、デフレ脱却は政府として判断

最低賃金。 白書が第2章第3節で触れている最低賃金は、厚生労働省の中央最低賃金審議会と、各都道府県の地方最低賃金審議会で改定が審議されます。流れは関連記事「最低賃金はどうやって決まるのか」にまとめています。

デフレ脱却の判断。 白書は脚注で、2006年3月15日の内閣府の参議院予算委員会提出資料「デフレ脱却の定義と判断について」の内容を示しており、判断の主体については次のように記載されています。

デフレ脱却を政府部内で判断する場合には、経済財政政策や経済分析を担当する内閣府が関係省庁とも認識を共有した上で、政府として判断することとなる。

(出典:令和8年度 年次経済財政報告 第1章第1節 24ページ)

経過

日付と出来事の一覧を開く(2件)
  1. 内閣府が令和7年度年次経済財政報告を公表(内閣府の「白書等」のページの日付)
  2. 令和8年度年次経済財政報告を公表(同日の定例閣議に配布)

出典

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